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「俺、家でるわ」
「え?」
「離婚届は、今度送る。
お前は、理香と由香の本当の父親の所に行け」
「理香の父親は、貴方よ!」
「それもどうか怪しい……」
「そんな!
お願い信じて、理香は貴方が父親なの!
あの人とだって一度しか……」
「その一度が問題なんだろ!」
そう。その一度が問題なんだ。
だけど、私の心は、貴方だけのモノ……
「……」
だけど私は、何も言えなかった……
「パパ!」
理香が、英雄さんの元へ走る。
だけど、英雄さんは振り向く事は無く。
英雄さんは、二度とこの家に来る事はなかった。