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「パパ、何処に行くの?」
理香が、怯えながら英雄さんに尋ねた。
そして、こう言った。
「理香は、本当に俺の子なのか?」
「当たり前じゃない!」
考えるより口が先に出た。
私の目には、涙がボロボロと零れる。
もう何もかも嫌になった。
ただ悔しかった。
全てはあの同窓会のせいだ……
「パパ!
ママを苛めちゃダメ!」
理香が、英雄さんに向かって怒鳴った。
英雄さんは、無言で仕事部屋に戻った。
「パパ、どうして怒っているの?」
私は、答えてあげる事が出来なかった。
由香が泣いている。
大きな声で泣いている……
「赤ちゃん泣いてるよ……?」
「そう……ね……
赤ちゃんは、泣くのが仕事だから……」
私は、ゆっくりと由香におっぱいをあげた。
「赤ちゃんの名前は、無いの?」
「この子の名前はね、『由香』よ」
「ゆか?」
「そう、由香よ……」
私は、そう言って由香の頭を撫でた。
と、その時だった。
英雄さんが、鞄を持って私の前に立った。