10、ついに念願のスキルをゲットしたのだ!
それから、俺とルシアちゃんはメロンを相手にレベルを上げに上げまくった。
畑が全滅してしまうから、とブレスを禁じられた俺はひたすら自前の爪だ。メロンは良いが、芋虫は勘弁願いたい。
だが、その結果。
『――≪リージェ≫のレベルが9に上がりました――』
『――≪リージェ≫がスキル≪竜爪斬・Lv.1≫を獲得しました――』
「よっしゃ!!」
思わずガッツポーズ。俺はまた一つスキルをゲットしたのだ。
メロンを相手に試し斬り。
「血飛沫と共に踊れ」
切り裂かれ果汁と蔓が舞い散る。
『――≪リージェ≫のスキル≪竜爪斬 Lv.1≫が≪血飛沫と共に踊れ Lv.1≫に改名されました――』
「ふむ、まるで演舞のように美しいな。俺様に相応しいスキルだ」
俺が産まれてから早くも一カ月。焦れるようなルシアちゃんを横目に、いやかなりガン見しながら俺は成長を続けてきた。
毎晩、女神像の前で祈るルシアちゃんの横で、女神に呼びかけることも忘れない。
「おい、寝坊助の女神さんよ。いい加減呼びかけに応じたらどうなんだ? じゃないと、暗黒破壊神たる俺様があんたの世界を全部いただいちまうぜ?」
もちろん、返答などない。
仮説なのだが、この女神、とっくに起きてるんじゃなかろうか。ルシアちゃんが回復魔法を使う時の詠唱が女神に呼びかけて祝福の力を借りるって内容だし。レベルアップやスキル獲得の声も何となく女性的だしな。
もし俺の仮説が正しいなら、いつまでもここにいる必要なんてない。
ルシアちゃんが「見習い聖女」から「聖女」になるには、癒しの力を使わせまくってレベルアップすれば良い。
試す価値はあるか。
それからまた一ヶ月。俺はわざと怪我をしまくった。
が、心配性のルシアちゃんにはそれで充分。俺が血を流す度にすっ飛んできて回復魔法をかけてくれるんだ。
そしてある日。
「あ?! やった! やりましたよ、リージェ様! 私、聖女になりました!」
「ふ、俺様の予測は正しかったようだな。今後も俺様のために励むと良い」
ルシアちゃんが感極まって俺を抱きしめながらピョンピョン撥ねる。
予想通り、なのだが、ルシアちゃんと違って素直に喜べない。
何故ならば……。
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【ステータス】
名前 : リージェ
レベル : 12
EXP : 249/18231
HP : 1276/1276
MP : 1218/1218
Atk : 2810
Def : 834
スキル : タリ―語 Lv.1
我が劫火に焼かれよLv.3
血飛沫と共に踊れ Lv.5
鑑定 Lv.1
称号 : 中二病(笑)
害虫キラー
農家
ドM
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「誰がドMじゃあぁああああああ!!!!!」
誰が! いつ! 痛いの気持ちいいとか言ったよ?!
叫んでみても一度ついた称号が消えるわけでも無し。
もはや悪意しか感じんぞ、この称号。
だがしかし、ついに念願のスキルをゲットしたのだ!
「そう! 全てを見通す神の眼を!」
『――≪リージェ≫のスキル≪鑑定Lv.1≫が≪全てを見通す神の眼Lv.1≫に改名されました――』
……ブレスの時も思ったけど、スキル改名がアリならドMって称号も「痛みに耐えし者」とかに変えてくんねぇかな?
「…………」
あ、称号はダメなんですね。はい。
まぁ、気を取り直して早速効果を試してみましょうか。
「全てを見通す神の眼!」
じっとルシアちゃんを凝視し、右腕上げて左眼を隠し、爪の隙間から覗き見る謎のポーズを取る。
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【ステータス】
名前 : ルシア
レベル : 15
ステータス詳細の取得に失敗しました
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見通せてないじゃん!
まあ、レベルだけでもわかれば戦うか撤退するかの指標にはなるか。
レベルしかわからなかったのは、ルシアちゃんのレベルが俺より高いからなのか、それともスキルレベルが低いからかは検証の余地ありだな。
因みにメロンとか芋虫は……?
「全てを見通す神の眼!」
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【ザンナ・メロン】
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【ブルーコ・ヴェレ】
レベル : 1
ステータス詳細の取得に失敗しました
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「……」
うん、スキルレベルが低いからだな。メロンはモンスター化してないからステータスがないってことで。
何にしろ、ルシアちゃんが聖女になった今、ここに留まり続ける意味もないだろ。
ここじゃこれ以上の情報もレベルアップも見込めないし、出発しよう。
外のモンスターとやらがどのくらいの強さかはわからないけど、逃げ回ってりゃどうにかなるだろ。