プロローグ 1話 地球で見た最後の景色
俺の名前は玉城 絢一。大手スポーツ用品メーカーの企画・開発をしている37歳だ。
元はスポーツインストラクターとして一流スポーツ選手とかかわっていたが,30歳を機に今の会社に就職した。
結婚もしていない。彼女もいない。マンションで一人暮らしをしているただの中年男性だ。
悔しくなんか無いぞ? 街中で高校生のカップルを見て悔しがってなんかないからな? 本当だぞ?
俺だってその気になれば・・・
俺は特に上を目指すこともなく、そこそこ優秀な高校に入り、スポーツインストラクターを目指して専門学校に進学した。
たいして苦もなく、楽しく学生生活を過ごすことができた。
それ自体に悔いはない。
そして スポーツインストラクターになることもできた。前職を活かせる大手企業に就職することもできた。
社会人となって16年。
今思えば急に頑張りすぎたのでは無いだろうか?
俺は基本怠けることが好きなのだが、この時期はたまたま会社が忙しかった。
朝から夜まで大忙しに俺は各地へととび回った。
食事や睡眠すら惜しんで。
そして最後にはくたくたになりながら、何とか地獄の一週間を乗り越えた。
どうやら会社は今が成長時で大きくなるようだ。
この忙しさは当分は続くそうだ。
今がチャンスなのはわかるが、それにしても忙し過ぎる。
同僚で体調を崩した奴もいるし、俺だってスケジュール調整を間違えてたら確実に体調を崩していたに違いない。
幸いうちの会社はブラックではなく、同僚はちゃんと休むことができたらしい。
「……もうこんなに働きたくない。いっそのこと田舎に帰ってやろうか」
なんてあまりの多忙さに心を黒くしながら帰り道の街道を歩いていた時だった。
ブオオオオオオオ!
大きなエンジン音が聞こえる。
「……何だトラックか」
と興味を無くして歩き出す。
「おい!危ないぞ!」
誰か何か叫んでいる。
煩いなぁ。こっちは疲れてて早く帰って寝たいのに。
「危ないって!気付ーー」
まだ何か叫んでいる。一体どうしたんだ?
とゆっくり振り返ると、視界一杯に大型トラックが入った。
「えっ?」
世界が止まったように、ゆっくりトラックが近付いてくる。
よくTVで人が車にひかれてしまうシーンを見て、それくらい避けれるだろう。とか思って舐めていた。しかし、このサイズと距離では無理だ。それに今の体調ではとても。
運転席には居眠りをした中年の男性がいる。
そっちも働き過ぎか?
そう思いたい。飲酒運転とか自業自得な都合なら嫌だな。
そう思っているうちに目の前にまで圧倒的な力をもったトラックがやってきた。
ガードレールがあったはずだけど……全然役にたってないじゃないか!
ああ、働き過ぎなんだよ。体調が万全なら最初の警告に気付いて避けれたかもしれない。
働き過ぎなければ、こんな遅い時間に帰ることもなかった。
はあ、疲れた。
生まれ変わったら、楽しくのんびりと田舎で暮らしてやるからな。
そして俺は大きな衝撃を受けて……死んだ。