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「……はぁ。
わかった。僕も逆らわない」
少年は小さくうなずく。
「では、改めてようこそ。
十三、君も晴れて曽呂勇士学園の生徒だ」
清空が笑顔で迎え入れる。
少年の名前は美神十三。
幼い容姿の男の子だ。
「うん、よろしくね」
十三が小さく言った。
「ああ、よろしくな」
清空が親指を立てる。
十三も真似して親指を立てる。
「上出来だ!」
清空がそのまま十三の拳を軽く当てる。
「あ……」
十三が思わず声を出す。
「じゃ、4人転入ってことで」
セロも拳を十三の拳に当てる。
「まぁ、成績で一番はオトネのものですます」
オトネも拳を十三の拳に当てる。
「まぁ、そういうのも悪くないか」
百道も同じように十三の拳に手を当てた。
十三の心に何かが響く。
暖かい何かが響く。
ゆっくりしんとうしていく。
そして思った。
「こういうのも悪くないね」
十三が小さく笑う。
それは、生まれてはじめて浮かぶ笑顔だった。
十三は今日始めて13でななく十三という普通の少年になれた気がした。
そして、これから先もそうであろうと思っていた。
これから先、運命が変わることを知らずに……
「未来は僕らの手の中~♪」
放送が流れる。
「昼休みが始まったようじゃな」
清空がそういうとセロがいう。
「かなりロックですね」
「まぁ、自由が売りの学校だからな」
セロがそう答えると百道がいった。
「でも、俺は嫌いじゃないぜ?
ブルーハーツ」
「私は、ですますスイッチ一筋ですます。
ですますスイッチ」
オトネが、そういうと瞳をキラキラと輝かせる。
「さぁ、楽しい楽しい学園生活のはじまりはじまりー」
少女が、そういって手を叩く。
「誰?」
十三がその少女の方を見て尋ねた。
「私?私の名前はピノ」
「ピノさん?」
「そうピノ」
ピノと名乗る少女は十三に近づいて手をぎゅっと握りしめる。
「ピノのお友だち?」
ピノは校長に尋ねた。
「そうですねぇ。
みんなピノさんの友だちですよ」
校長がそういうとピノの瞳が輝く。
十三の手からピノは離れない。
「十三がお気に入りなようだな」
清空はそういってケラケラと笑った。