51
「……んー」
メガネをかけた小柄な少年が小さく唸る。
少年は、ゆっくりと空を見上げる。
「さて、どうする?
サーティン」
女が少年に問う。
「僕は生きるよ」
「どうやって?」
女が笑う。
「君を殺して僕は生きる」
少年も小さく笑う。
「自慢の銃もないのにどうやって戦う?
手も砕け足も潰れまさに手も足も出ない状態だろう?」
「はは。
僕のこと知らないか……
情けないな僕の存在もまだまだだな」
少年は弱々しく笑う。
「サーティン。
お前は殺し屋だろう?
ただの殺し屋。
一匹狼、友だちも、仲間もいない。
ひとりぼっちの殺し屋サーティン」
「そうだね。
僕は殺し屋。
でも、こういうことも出来るんだよ」
そういうと少年の身体が輝く。
そして、次の瞬間、女の視界には少年はいない。
「逃げたのか?」
女は首を傾げる。
すると背後には少年が立っていた。
そして、女の背中に軽く触れた。
「僕は殺し屋で癒やし屋。
見たもの全てを癒やす能力を持っているんだ」
「それで?」
女が苛立つ。
「細胞を活性化させるってことはね。
破壊させることもできるんだよ?」
少年が大きく下がる。
女は、小さく笑う。
「それで?」
「気づかない?
君の背中の細胞はもう破壊されているよ?」
少年も笑う。
「愚かな。
人間風情が神族に勝てるなど……」
女がいう。
「ミソラさんだっけ?
君は、永遠に破壊され続けるんだよ」
「このような超力再生ですぐに癒える」
「そうだね。でも僕は逃げるよ。
ほら、おにさんこちら手のなる方へ」
少年は手を叩く。
「侮辱するのか!」
ミソラは、怒鳴る。
「そうだね、僕は逃げちゃうけどね。
またね、バイバイ」
少年はそういってそのまま姿を消した。
「逃げられちゃったみたいだね」
白銀が嬉しそうに笑う。
「白銀、見ていたのか?」
「うん」
「そうか、無様な姿を見せてしまったようだな」
「……気にしなくていいよ。
君の破壊細胞はすでに消したから」
「ん?そうなのか?」
「うん、でも次は逃さず始末してね」
「ああ、次こそは必ず……」
「あの子、サーティンはベルゼブブさまにとってもモトフミさまにとっても面倒だからね……
そして、もうひとり面倒なのが……」
「亜金だろう?放っておいてもやつは死ぬよ。
自らの手でな……
それを邪魔したのがサーティン、本当に面倒なやつじゃ」
「うん、じゃ。
行こうか……ベルゼブブさまとモトフミさまの協定議会へ……」
「ああ」
ふたりは、そういってその場を去った。
ふたりが消えたあとふたりの会話を小石から拾い上げ全てを聞いた少年。
少年にはもうひとつ能力があった。
それは、メモリーといって触れたものの記憶を記憶媒体に移す能力だった。
「ふぅ。
少し面倒になってきたな……」
少年は、ため息を付いたあとその場を離れた。