第44話 気づかぬ想い?
◆◇◆
ラスクの対応は、エリーちゃんも作れるようになったからほんと感謝しか浮かばない。
(じゃないって! こっちの疑問を解決しなきゃ!)
その問題であるジェフは、僕を見てニヤニヤしてるだけだし。
「な、ななな、なんで僕がエリーちゃんに⁉︎」
「一つ屋根の下だろ? いくら居住スペース分けてたって、仕事でも恐怖症持ちがあれだけ気ぃ許すか? てっきり、どっちもだと思ってたんだが」
「ないないないない、僕モテない!」
「大声で、
「……ごめん」
まだ女の子達や、ラスクを食べてるカイト君達がいることすっかり忘れてた。
幸い、距離があるからはっきりは聞こえてないみたいで少しホッと出来た。
「ま、状況はともかく。結構美人だろ? 男としてなんとも思わないのか?」
「そ、そりゃ、可愛いし綺麗だけど……そう言うのは、よくわかんくて」
「彼女いたことないのか、やっぱ」
「わかってて聞くジェフひどい‼︎」
つっかかろうにも、片手一つで頭を押さえ込まれたために不可能でした。
「まあ、その女顔だし? 逆に恨みふっかけられんのが多かっただろうなぁ? この間のは別だけどよ」
「あれは特殊!」
「けど、祭りには参加しねぇのかよ? 定休日ズラしてるだろうが、せっかくなのに二人して働き詰めじゃぁな」
「へ? これ参加じゃないの?」
「広場とかならわかるが、ここ住宅街だろ!」
ペシっと軽くデコピンされ、ちょっと痛かったから手でさすった。
ロイズさんからも特に言われてないし、区外でもちゃんとお客さん達は来てくれるから大丈夫とは思ってたものの、ジェフからはそう見えなかったぽい。
「仕事真面目なのもいいが、明日まであんだろ? エリーとちょっとくらい遊びに行けよ。お前だって俺達と同じでここ初めてなんだろーが」
「そうだけど……」
遊びに行こうか結局聞きそびれてるから、いざ聞こうにもどうすれば。
「それなら、これがちょうど良かったわね!」
「か、カミールさん⁉︎」
いきなり割り込んできたから、すっごく驚いてしまった。
子供達はいいのかと思ったら、もう食べ終わってて仲良くおしゃべりしてる最中。注意はしてても、僕に何か用があったみたいだ。
「ど、どうかしました?」
「いきなりごめんなさい。うちの旦那さんからの伝言忘れてたから、渡しにきたの」
はいこれ、と渡されたのは手紙用の封筒。
蜜蝋とかはなくて、本当にただの伝言みたいな感じだ。
とりあえず開けてみれば、伝言は便箋1枚でした。
*・*・*
スバルへ
この前言い忘れてたが、祭り最終日は休みにしろ
後夜祭に出ろとは言わねぇが、エリーと一緒に露店巡りとかしな
せっかくの祭り、ずっと仕事じゃ息抜き出来ねぇだろ?
仕込みしちまったんなら、販売だけはミント達に行かせる
これはギルマス命令として、聞くように
ロイズ
*・*・*
エリーちゃんとのこと関係ないにしても、既に先手打たれてました。
「お、なーんだ。休みもらえたんなら、行けよ“デート”!」
「え、何々? おばさんにも聞かせてその話!」
「まだ予兆があるかどーかっすけどね?」
「ふ、二人ともやめてください!」
「エリーちゃんね? スバルちゃん、もしかして」
「いやまだそうとは決まってませんからぁああ⁉︎」
そんな恋バナアンテナびんびん飛ばしながら近づかないでください!
僕、自分の恋愛経験ほんとにないし、エリーちゃんをそう言う対象で見てるかと言われても自信がありません!
だけど、
「いい。良いわ……一つ屋根の下で生活してる男女。でも、男の子の方は女の子と偽って生活してるせいで公に出来ない。まさに、禁断のこ・い、ね?」
カミールさんのイメージがどんどん崩れていくんですが、これってどう対処すれば良いのか。
ジェフも、さすがにちょっとばかり引いていた。
「……助けて、ジェフ」
「無理だろ? ま、俺もそろそろ行くわ」
「一人でこの人対処しろと⁉︎」
「だって、俺ある意味部外者だし?」
「話のキッカケ振ったの君だよね⁉︎」
逃すもんかと腕を掴んでも、腕力は当然向こうのがあるから引きずられてしまう。
それと、横からカミールさんが何故かついてきた。
「今はときめいてなくても、時間を共にすれば変わってくるわ! エリーちゃんを見ても、本当になんとも思わない?」
「なんとも……?」
街の女の子達はいつの間にか帰ってて、エリーちゃんはシェリーさんと子供達の相手をしてた。王子様やユフィ君がいても、子供だと恐怖症が出にくいからずっと笑顔だ。
(可愛い、し。美人だけど……)
格好良さに胸キュンしちゃう機会は多々あるが、女の子として意識することは、考えてみたら少ないかも。
ちょっとだけ、意識しながら見てみたら、なんだか隣にいるシェリーさんとは違った可愛さのエフェクトが広がった。
「す、少し、は……」
「おー?」
「芽吹く時は、君にもいずれわかるわ。さて、子供達を連れてそろそろ行くわね?」
と言って僕らから離れると、皆の方にささっと行ってしまった。
「ジュディ、ユフィ。ママの用事も済んだから次のとこに行きましょう?」
「も、もう……」
「えー……あ、カイトお兄ちゃん達も一緒に行こうよ! ダメ?」
「ぼ、僕達も?」
「い、いい、の?」
「うん!」
ジュディちゃんの笑顔全開だ。
これを断れる勇者はいるだろうか、どうだろうかとジェフの腕を離しながら見守っていると、段々とカイト君とメイリーちゃんの表情が輝き出した。
「行きたい!」
「わ、私も!」
「それなら決まりね? スバルちゃん、エリーちゃんも頑張ってねー」
「お邪魔しました!」
「あ、ありがとう、ございました」
行儀よくお辞儀した二人を、ジュディちゃんはカイト君をユフィ君がメイリーちゃんと手を繋いで、カミールさんが後ろからついて行く形で行ってしまわれた。
「んじゃ、俺もそろそろ行くわ。シェリー、買うもんもう大丈夫か?」
「あ、うん! もう大丈夫」
「明日はわかんねぇが、また来るぜ」
「お、お邪魔しましたっ!……え?」
シェリーさんがお辞儀をしてから、ジェフはすぐに彼女の空いてる手を掴んで歩き出しました。
驚く彼女に、ジェフは構わずに進んで行く。
「なんでまた繋ぐの⁉︎」
「だーから、迷子防止だって言っただろ?」
言い合いしながらも、ずるずると引きずるように連れて行き、やがてすぐに見えなくなってしまう。
これには、エリーちゃんと一緒に笑い合うしかなかった。
「いつくっつくんだろ?」
「ジェフが言うには、昇級試験が終わってからだって」
「なーる? シェリーのご褒美には最適だね」
「たしかに」
本人同士が知らずってシチュエーションも面白いけど、この後どうなるか楽しみだ。
そこで、ふと、さっき指摘されたエリーちゃんの事を思い出した。
子供達に向けた笑顔とは違う、元気そうな笑顔。
実にエリーちゃんらしいが、僕にはどっちも可愛いと思えた。
(好き、って、ただ好きじゃ……ダメなんだろうか?)
そこまでの好きには、まだ到達どころかかすりもしていない。
だけど、一緒に居て楽しいのは、この世界に来て過ごしてからはっきりしている。
「……バル。スバル?」
「ふぇ⁉︎ な、何?」
考え込んでたら、エリーちゃんの顔が結構近くまで迫ってて驚いた!
「いや、休憩挟むなら今のうちだと思って聞いたんだけど?」
「あ、あ、そだね! っと、お休みで思い出したんだけど、カミールさんからロイズさんの伝言預かったんだ」
「なんて?」
「明日は休みにしろって」
詳細を伝えるのに、握ったままの紙を彼女に渡した。
さっと目を通してくれると、すぐに苦笑い。
「ほとんど、君のためだろうね。仕込みはまだだったし、ちょうど良かったんじゃない?」
「じゃ、明日は遊びに行こ?」
「いいよ。それなら、今日は売るに売るか」
「だね!」
なので、チーズラスクも売り出そうと準備を始めたら、少しずつお客さんがやって来たのでドーナツとラスクをたくさん販売しました!
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【ドーナツでラスク】
ドーナツもパンだから、ラスクだって出来ちゃうんです!
作り方はそんなに難しくありませんノ
《材料》
・冷凍ドーナツ2-3個
・スティックシュガー1-2本
《作り方》
1.冷凍ドーナツを好きな大きさにカットですが、厚みは5ミリ幅がいいでしょう。オーブンは160度に予熱
2.天板にクッキングシートを敷き、1を並べます
3.スティックシュガーを全体に振りかけます
4.160度のオーブンで15分焼きます。焼き上がってから、5-10分程放置
5.常温でも出来るようですが、焼き時間が変わるのでご注意を
オールドファッションでも出来るようなので、是非一度お試しあれノ