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童話

 長い長い夢を見た。
 ウサギは目を覚ますとパンダに会いたくなった。
 会いたくて会いたくて仕方がなかった。

 今は寝てるかな?
 もう起きてるかな?
 お腹すかしていないかな?

 ウサギは居ても立っても居られなくなり
 ウサギはパンダに会いに行った。

 ご飯を作ってあげよう。
 美味しい美味しいご飯を作ってあげよう。
 得意な得意な料理を食ってあげよう

 ウサギは走った。
 いっぱいいっぱい走った。

 キャベツにニンジンにタマネギ。
 野菜をいっぱいいいっぱい持って走った。

 パンダの部屋の扉の前。
 ウサギは胸を集らせ息が出来ない。
 暫く会えなかった。

 怒ってないかな?
 嫌われてないかな?

 心配で心配で仕方がなかった。
 勇気を出そう。

 ウサギはパンダの部屋の扉を開けた。
 ウサギは目の前の出来事が信じられなかった。
 何が起きているのかわからなかった。

 ウサギはパンダの名前を読んだ。
 パンダは何も反応しない。
(パンダには何も聞こえない)

 ウサギはパンダの体を揺すった。
 パンダは動かない。
(パンダは動けない)

 ウサギはパンダを抱きしめた。
 パンダは冷たかった。
(パンダは何も感じなかった。)

 パンダは目を開けない。
 パンダは動かない。
 パンダは何も聞こえない。

 ウサギは後悔した。
 何故だかとてもとても後悔した。

 ウサギは泣いた。
 涙が枯れるまで泣いた。

 目が赤くなるまで真っ赤になるまで泣いた。

 何かに疲れて目の周りが真っ黒になったパンダの姿を見て
 ウサギは泣いた。
 ずっと泣いた……
 ずっと……
 ずっと……
 ずっと……

 パンダは夢を見た。
 大きな大きな夢だった。
 それは夢だった。
 夢でしかなかった……

 パンダの夢は叶った。
 パンダは名前も知らない誰かにお礼を言った。

「ありがとう」

 お礼を言っているのに涙がこぼれた。
 嬉しいはずなのに涙がこぼれた……

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