短編
何も言ってくれなければ何もわからないよ。
なにを失敗したのかわからないよ。
僕は君を傷つけることしか出来ないのかな?
君の夢を見たよ。
夢の君は、笑っていた。
今の君は笑えてるのかな?
それとも別の誰かとなら笑えるのかな?
鳴り止まない胸の鼓動。
君もまたバイバイなのかな?
出会いと別れのこの場所で、僕は君と出逢い、そして僕は君と別れる。
ただそれだけの人生。
君は僕が変わらないって言ったけど、君は変わったね。
人は変わっていくものだけど、変われない人もいる。
変わりたくても変われない。
変われば壊れる気がして変われない。
ただ失うことだけを考える。
ただ失うことの恐怖と不安の繰り返し
、今までもこれまでもこれからも
変えることのできない僕。
すぐに変われる君が羨ましい。
そして、君がそばにいるあの人が羨ましい。
ひとりは楽だ。
ひとりが楽だ。
でも、それはひとりよがり。
ずっとひとり。
いつもひとり。
ひとりじゃないって気づいた時。
「お前はひとり」
とあの人に言われ、その後の言葉に信じている人すべてに裏切られたことに気づく。
離れていくなら来なければいいのに。
傷つけるだけなら近づかないで欲しかった。
人を傷つける人は嫌い。
なのに僕は傷つける側の人間にもなってしまった。
消えゆく命のままに。
僕も消えれたらいいのに。
生きるってなんだろう?
死ぬのと違いはあるのかな?
死後の世界があるのなら、生きている世界と違いはない。
生きている世界で、これだけ傷つけられた。
なら死後の世界では傷つけられないのかな?
答えは誰にもわからない。
わかっているのはただひとつ、死後の世界に他の人が存在するのなら、やっぱりその世界でも僕は傷つくだろう。
僕は天国を知っている。
僕の天国を知っている。
幼き頃。
事故にあったときにみた天国。
白いなにもない部屋にただひとり
僕がいる。
そこには、窓がある。
そこからみんなが楽しそうに遊んでいる姿が見える。
だけど、僕はその輪に入ることが出来ない。
入れてもらえないことを知っているから。
入れてもらってもいらない子にされて追い出される。
よく大人は言う。
「子供は残酷」
だけど、僕は思う残酷なのはそれを残酷だという大人の方なんだと。
僕が、傷つけられるのを楽しそうに見ていた教師。
僕を一緒になって傷つけた大人。
僕は心の中で思っていた。
願っていた。
大人の世界には、イジメはないと。
でも、現実は甘くはない。
大人の世界でもイジメはある。
だから、天国にも地獄にもイジメはある。
イジメられる人間は、どこに行ってもイジメられる。
苦しむ。
イジメられる方も悪いと言う人がいる。
例えば、コミュニケーション能力がないのがイジメられる原因だと言う人がいる。
僕の場合。
「おはよう」
のあとに来るのは小石と「バケモノは消えろ」と言う言葉だった。
何度も努力した。
でも、ダメだった。
つらい思いをしたくないので、挨拶を止めた。
そしたら、挨拶しないと言われるようになった。
結局、イジメる人はなにをしても、イジメる。
どっちに転んでも苦しいんだ。
どっちに転んでも痛いんだ。
知らない世界で、知らない苦しみを味わうなら知っている苦しみであるこの世界に漂うことにする。
僕が僕でいられるウチに僕は僕の役目を果たす。
君にさよならは、言いたくない。
僕は、表情が少ない。
表情がないときは楽しい証拠。
嫌なときは、嫌な顔をする。
感情と心はあるから。
笑うと怒られる環境にいた。
喜ぶと怒られた。
褒められたことなんて一度もない。
出来てありまえの環境にいた。
なにもできない実力。
苦しみしかない現実。
喜んだらダメな環境。
今さら、「バケモノじゃない」とか言うのズルいよ。
言葉だけでは、もう響かないよ。
俺は、あのときあの場所で抱きしめて欲しかっただけなんだ。
「バケモノじゃないよ」
そう言って抱きしめて欲しかった。
甘えなのはわかっている。
でも、甘えたいんだ。
ずっと甘えれなかったから。
でも、あの頃には戻れない。
今は、身体中が痛い。
今は、人の温もりがわからなくなった。
初めて人を抱きしめたときなにも感じなかった。
暖かいとか冷たいとか。
なにも感じれなかった。
俺の感覚は、少しずつ消えていく。
最初は、味覚、人に対する希望、平常心、触覚、そしてもうすぐ言葉を失うだろう。
喉に出来たポリープ。
元気に育っているのがわかる。
でも、俺はとらない。
生きるのが、楽だけど。
死んでもいいやと思う。
副腎に出来たポリープは、15年放置している。
でも、生きている。
脳に出来ている無数のポリープと若干の縮小。
記憶障害で、もう君の笑顔が思い出せなかった。
君の顔も思い出せない。
だけど、夢の中の君は笑っていた。
君の顔が、残っている間に僕は静かに生きたい。
さよならの言葉は、なくてもいい。
さよならを言わなければ、また会える可能性があるから。
叶うのなら、さようならのかわりにありがとうをもう一度言いたいな。