バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

18

 カリュドーンの猪が舞い降りるその日、世界は青く空は綺麗で雲ひとつなかった。
 桜が舞う季節。
 高校生になったばかりの木ノ葉 あいうは、今日の学校を楽しみに登校していた。

「今日も空が綺麗だなー」

 あいうが、そう言った瞬間。
 空が、明るくなる。
 そして、全てが炎に埋もれる。

 それは、世界が滅びる序章のはじまりだった。
 米軍基地が突如、日本から撤退が決まった。
 このとき、日本はなにかを察するべきだったのかもしれない。
 しかし、日本の国民……特に沖縄の住民は両手を上げて喜んだ。
 そして、軍がない国は弱く脆かった。
 米軍が撤退したあと日本は、武器を持たない国と胸を張って主張していた。
 日本無防備宣言。
 それにより、日本はテロの標的にされることになる。
 武器を持たない国ほどテロの標的にしやすいことはない。

  武器を持つと攻撃の対象になる。

 そう主張した人がいる。
 だけど、現実問題凶悪犯は、武器を持っている人を基本襲わない。
 武器を持たない弱い存在を傷つける。

  お前たちが攻撃すると、別の存在を傷つけるぞ……と。

 そうやって武器を持たぬ弱いものが死んでいく。
 誰かが言った。

 これは、「聖戦なのである」だと。
 人々の願いは、平和である。
 そして、これが本当の聖戦なのなら神は自分たちの死を望んでいるのかと神を呪いながら死んでいった。
 あいうは、そういうのを考える余裕もなく死んだ。
 苦しまず、一瞬で灰になった。

 大阪にある枚方から殆どが消えた。
 しかし、あいうはそのことを知らない。
 なぜなら、もう死んでいるのだから……

 あいうは、長い長い道を歩いていた。
 知らない道だった。
 暗い道で足元のみ明かりがある。
 真っ直ぐで怖い道。
 あいうは、大きな声で叫んだ。

「誰かいませんか!!」

 しかし、返事はない。
 誰もいない薄暗い道。
 あいうは、不安になり泣きたくなった。

 すると目の前にひとりの男が現れる。
 そして、その男は言った。

「ようこそ魔界へ……」

 あいうには、なんのことかわからなかった。
 ただ、わかっているのは、目の前に人がいる。
 それだけで、少し安心した。
 安心したら緊張の糸が切れ、そしてその場で意識を失い倒れた。

「さて、あいうさん。
 あなたは一度死にました。
 あなたを待つもの。
 それは壮絶な未来です」

 男は、そう言ってあいうの体を宙に浮かし、そして消滅させた。

「汝、魂に幸あれ……」

 そう言って、男は姿を静かに消した。

しおり