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第15話

「のぼさん!」
あの速さと高さ、あの角度からの落下、そしてベッド数台との衝突。
無事であるほうがどうかしている。
重傷を負ったであろう友人を助けるべく成行(しげゆき)は一歩––––そう、たった一歩踏み出した瞬間、

––––シャーン!

林太郎(りんたろう)からの斬撃(ざんげき)が見舞う。

––––ガキーン!

五虎退(ごこたい)を横にして受け止め、からくも白刃を浴びずにすんだ。

「ば、ばかなっ!」
たったいま(のぼる)を投げ飛ばしたばかりで成行との間には距離が、抜刀(ばっとう)するには時間があるはずなのに、林太郎は一瞬で撃ち込んできた。
人の身さばきとは思えぬ動きに驚く成行。
––––なぜ、人がそんな動きができる⁉
そう疑念を吐き出したかった。だが、林太郎の二撃めがそれを許さない。
「人の心配をしている場合かね?」
と、林太郎。
その通りだと成行も思った。

––––ギギーンッ!

二撃めもなんとか防いだ。
だが、次はどうだ?
速さも重さも初撃より次撃のほうが段違い。二度受けとめただけで刀を握る手がしびれ、力が入らない。

「……やられる!」
つぶやいた成行のそれを林太郎は耳にし、唇の両端を耳に届くのではないかと思うほどにつりあげた。



––––シュッ、シュッ、シュッ!

升の手からこぼれた今剣(いまのつるぎ)が、床にいくつもの円を描きながら金之助(きんのすけ)の数歩のところまで滑ってきた。
「……」
金之助は拾いあげようと扉から離れる––––が、

––––ドーン! ドーン!

まるで厚いドアが()けて見えるかのように、児啼(こぎゃなき)たちのぶつかる音が激しくなる。金之助は慌てて扉に背を押しつけた。
「……ダメだ!」
扉がわずかでも開いたのなら、そこからあの(あやかし)の子どもたちが身をねじりこませ、たちまちのうちにこの部屋いっぱいになってしまう。
成行も升もそして己も、すぐさま押しつぶされてしまうに違いない。
「うーん……無理かぁ」
背と両手で扉を押さえながら片足を伸ばしてみてもまったく届かない。

––––ギュイーン! ギュイーン!

金属が打ち合う高い音が部屋中に響く。
林太郎が斬りつけ、成行がそれを防ぐ。だが、金之助の目からも成行が押されに押されているのがはっきりとわかる。次か、その次には間違いなく切り捨てられる。

さらに、

––––ユラリ。

首なし将校が起き上がり、両腕を前に伸ばして歩き出す。
傀儡(にんぎょう)のようにぎこちない足どりだが、確実に成行を捕らえようと進んでいるではないか!
「やるしない!」
金之助は一か八か、床に転がる短刀を取りに行く決断を下した。

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