第14話
––––シュン!
空気を裂く音と、
––––ガキィーン!
刃と刃がかち合う響きが連続する。
火花と一緒に血のしずくも散り広がった。
「……ほぅ、
彼がまだ牛若丸と呼ばれていた時代、あずけられていた鞍馬寺の
しかし、そんな名前も
––––ガキィーン! ガキィーン!
ただただ迫るサーベルから命を守る、唯一の頼み綱であった。
……三合、四合、五合。
何度打ち下ろしても防がれることに苛だち、元二郎は手にしたサーベルを背中に触れんばかりに大きく振りかぶる。
「……いまだ!」
口に出すより早く升は動いた。
両足を元二郎の左足にからめる。
––––ズズッ!
今度は元二郎の靴が血で滑った。
升が飛び込んできた衝撃でサーベルと小脇に抱えていたおのれの頭を放り投げ、後方に吹っ飛ぶ。
「見たか、のうなしめ!」
目から火花を飛ばしつつ、言い放つ升。
「頭は地獄の
どうやら升は刀剣を握ると人格が
鼻息荒く、語気鋭く、
「おらおら、またおねんねかい?」
手にした今剣を、やたらめったら振っては、空気を鳴らす。
「さぁ、おまえのアソコにおったててやるぜ、ヒッヒッヒヒッヒ!」
先刻まで悲鳴をあげていた升はそこにはいない。
「いくよ、いくよ、いくよ〜!」
「図に乗るな、小僧」
まるで子猫の首根っこを持ち上げるように、林太郎は升の後ろ襟を掴んで引き上げた。
「え? うそっ!」
信じられない
ばたつかせる間すら与えず、
––––ブゥゥゥン!
ハエを追いはらうような軽い仕草で升を放り投げた。
鮮やかな
––––ガシャン! ガシャン! ガシャン!
いくつものベッドを巻き込んで盛大な音を立てて床に落ち、跳ね、部屋の壁にぶち当たって止まる。
「……」
升の意識もまた、そこで途切れた。