【2時限目】過去問100年分
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
≪予備情報≫
図解:『界立 異能力総合学院』入学への道程はこんな感じです↓
(注)この物語は下記、第一関門『センター試験』の突破を描くお話です
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
………!
………!!
………何か、僕を呼ぶ声が聞こえる………
「……あの!お気を確かに!!」
「……はっ!」
「わ、私は一体………」
眼を空けると、僕は床に横になっていた。
「……やっと、気がついたようですわね。あなた……数十分ほど、失神していましたのよ」
どうやら、姫が意識を失っていた僕を介抱してくれたようだ。
「す、数十分もですか……これは、大変お恥ずかしいところをお見せ致しました。それにしても……999年も浪人できる『大馬鹿糞野郎』がこの世に存在するとは……まさか、夢にも思いませんでした」
(間違いない!今、私のことを確かに『大馬鹿糞野郎』と!)
「……はっ、はぁんっ!……」
「……?どこか苦しいところでもおありですか、姫様?」
またしても、姫は動揺しているようだった。心なしか、吐息が漏れている様子が見てとれる。
「……な、なんでもありませんわ!そ、それより、そろそろ授業を始めてくださらないかしら?」
姫は動揺を隠すかのように、矢継ぎ早に催促してきた。
「……かしこまりました。では、これを今からやっていただきます」
ドサッ!!!!!
僕は、あらかじめ用意しておいた大量のテスト用紙の束を、姫の机に勢いよく置いた。
「な、なんですの、この天井まで達しそうな用紙の束は……?」
「これは、センター試験で出題される全科目の過去問『100年分』です。まずは、これで姫様の現時点での学力をチェック致します」
「試験は『5教科6科目』として、1科目の制限時間が60分ですから、60分×6=360分=『6時間』。それを100年分ですので、6時間×100=600時間=『25日間』を擁する計算となります」
「と、いうわけで過去問終了までの『25日間』、姫様には『ここでずっと』過ごしていただきますので、何卒ご覚悟を」
「な、ななっ!!い、いきなり、学力チェックで25日間拘束するって……しょ、正気ですの!?そ、それに100年分って、どういうことですのっ!!」
「こんなの、む、無……うあぁっ……理!!絶対、無理ですわっ!!」
最初の刺すような口調が一転、慌てふためく姫の様子が心地よい。
「……?何をうろたえていらっしゃるのですか?たかが、姫様の浪人年数の僅か10分の1ほどの年数にすぎませんが……」
「『畜生にも劣る低脳ぶり』を999年に渡って披露されてきた姫様でしたら、この程度……汗をかく内にも入らない些事といったところでしょう?」
「て、天使の中でも四大貴族の1つに数えられる名家・レッドブック家の次期当主であるこの私に向かって、人間風情が『畜生にも劣る低脳』という言葉を吐き捨てて………は、はうっ!!!」
慌てふためいたと思ったら、今度は絶叫する姫。中々忙しい人だ。
正直、愉快な気持ちの方が大きかったが一応心配する様子を見せる。
「姫様……やはり、どこかお加減が悪いのでは……?」
「……で、ですから!!先程も申したように、私のことはお気になさらずっ!!!あなたは、あなたのやるべきことをおやりになれば、よ、よいのですっ!!!!!」
先程とは比較にならない位の動揺ぶりで、姫が訴えかけてくる。
まるで、何かを必死に隠しているかのようだ。
「…………………」
「な、なんです、その沈黙は!」
「………わ、わかりましたわ!こ、こうなったら、『100年分』でも『200年分』でもやり遂げて見せますわよっ!!」
「……ふっ。やっと、心の準備が出来たようですね。よろしい。これより、取りかかっていただきましょう!」
*
*
*
「では……始め!!!」
こうして、過去問100年分……25日間に及ぶ熱い『学力チェック』が、幕を開けたのだった。