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「僕はかつては重罪人だったんだ」

 白銀が語るのは、自分の生い立ち。
 自分の過去だった。

 男の名前は白銀。
 蜘蛛の王と言われ。
 土の中で暮らし世界の中核を捜査する。
 それが白銀の楽しみだった。
 しかし、世界はそれを良しとしなかった。

 白銀が世界中の地中を制覇したとき。
 この世界は滅びると言われているからだ。

 白銀の別名はアトラク=ナクア

 赤い目を持つ男だ。

 男は土の中のことしか知らない。
 そんな男の前に女が現れた。
 女の名前は清空。

「おい。土の中は楽しいか?」

 清空が尋ねる。

「楽しいね。
 土の中にはいろんな遺跡があるんだ」

「そうか」

「君は?」

「私の名前は清空。
 ファルシオン研究部隊の調査団だ」

「ファルシオン。
 古くからある部隊だね。
 僕を殺しに来たのかい?」

 白銀は息を吐くようにそういった。

「ああ」

「優しくしてくれるかい?」

「え?」

「土の中は楽しい。
 でも、いずれ終りが来る」

「そうだな。
 私はそれを阻止しにきた」

「なにを阻止するんだい?」

「世界の終わりを……だ」

「そっか」

「もっと楽しいことをしないか?」

「楽しいこと?」

 白銀の赤い目が明るく光る。

「ああ」

「それはどこにあるの?
 今すぐ掘りに行こう」

「違う」

「え?」

「世界は土の上にある」

 清空の言葉に白銀の目が輝く。

「土の上にも世界はあるの?」

「ああ。
 広い広い世界がある。
 行こう」

 清空は優しく白銀に手を差し出した。
 白銀は、目を輝かせながら清空の手を握りしめる。

 これは、清空と白銀が出逢ったときの話だ。

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