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――その頃。
「この感じ……
誰か死んだのか?」
ジャキがボソリと呟く。
「ん?どうした?」
ジルが首を傾げる。
それはベルも同じだった。
「いや、なんでもない」
ジャキは首を横に振った。
ジャキはわかった。
咎人がひとり死んだ。
ただ、それだけわかった。
「お前、最近変ったな?」
ジルの問いにジャキは苦笑いを浮かべた。
「そうか?」
「ああ、なんつーか。
優しくなった。
この前も子どもを助けてただろう?」
「あ、ああ。
気まぐれだ」
「さては、アンタ。
女出来たね?」
ベルがそういうとジルが驚く。
「なんだよ?どこのどいつだ?
いい女なのか?」
「ちげーよ。
それよりジルとベルはどうなんだよ?
進展したのか?」
「進展?どこからが進展なんだ?」
ジルが、そういうとジャキは逃げ口を探すべく答える。
「そのキスとかしたのか?」
「ああん?んなもんキスどころかセ――」
ジルがそこまで言いかけたとき、ベルが顔面にパンチをし言葉を防いだ。
「恥ずかしいことをいうでないよ」
「そっか」
ジャキは、少しがっかりした。
ベルのことが好きなわけじゃない。
自分とふたりの間に溝がある。
そんな気がしたからだ。
「よし着いたぞ。
アンゲロスの街に」
ジルの顔が真面目になる。
「あ、ああ……」
ジャキの顔には不安しか残らない。
ジャキには悩みがまだある。
ボクにどんな顔をして会えばいい?
そんな考えしか浮かばない。
ボクをいじめたことに後悔していた。
それは、罰を受けたからだ。
もしも罰を受けていなければ後悔していないかもしれない。
いじめとは受けたものは一生背負う。
だが、いじめた方は咎められない限りなにも感じない。
なにも覚えていないかもしれない。
だが、ジャキは覚えている。
いじめたことも。
そして、いじめられたことも……