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「んー」
ピノが小さく唸る。
「ピノ?どうした?大丈夫?」
「えへへへへへ」
ピノが嬉しそうに笑う。
「え?」
「ピノ死んじゃうっぽい」
「なにを言っているの?」
ボクの声に涙が交じる。
「そういう呪いなんだ」
「ピノ?」
それはボクにはなんとなくわかっていた。
ピノの身体から温もりが消えつつある。
ピノの身体が透けつつある。
「ボク、ピノの最後のお願い聞いてくれる?」
「最後だなんて……」
「聞いてくれる?」
「……うん」
ボクが小さくうなずく。
自分が駄々をこねても世界は変わらない。
「キスして」
「え?」
「ユニオンして」
「ユニオン?」
「そうピノと契約をして強くなるの」
「契約?なんのことかわからないよ」
「ピノとひとつになるの」
「え?」
「ダメかな?」
ピノの声が震える。
「ダメじゃないよ。
ピノこそボクがキスしていいの?」
「ボクだからいいんだよ」
ボクはピノの口唇にそっとキスをした。
柔らかいとか暖かいとか感じない。
なにも感じないキス。
味もわからない。
それは、ボクが緊張しているからだ。
「ん。ユニオン終わり」
ピノが小さく笑う。
そして、ピノの身体がボクの腕の中で消えた。
「ピノ?」
ピノが返事をすることはなかった。
「アスペルガー。
僕は君を許さない」
ボクは小さくうなずいた。
「僕は僕を捨て俺になる……」
ボクは僕を捨て俺になる。
するとす小石だけ強くなれる。
そんな気がしたから……
「ボクさん……」
紅鮭がそっと現れる。
「おいおい。
これは……どういうことだ?」
灰児も遅れてやってくる。
「灰児さん、紅鮭さん。
ピノが逝っちゃった」
「え?」
ボクの言葉に紅鮭が言葉を失う。
「この魔力。
ボク、お前はピノと……」
「ユニオンしました。
それがピノの願いですから」
「そうか……
わかった。
俺がボク、お前を鍛える」
「え?」
「ボク、お前はピノのユニオンすることで能力があがった。
能力があがるようになった。
お前は強くなる。
恐らく俺ら勇者の誰よりもな」
「俺が強くなるの?」
「俺?」
「はい」
「そうか、それがお前の覚悟か……」
「はい」
灰児はうなずく。
何かを感じ取ったのだ。
「私もお手伝いします」
紅鮭が、そういうと小さくうなずく。
ボクがほんの少し強くなった。
その瞬間だった。