第7話
––––シャーシャーシャーシャー!
蛇たちは新しい獲物の登場に、鎌首もたげ歓喜の声をあげた。次の瞬間、一斉にふたりの子どもを襲う。
「……ち、ちょっと、離してよ!」
––––コケッケケケケケケッ!
「やっばぁ〜い!」
バシリスクの目線を避けなければならない。叫びながら寅彦は顔を國男の背中に押しつける。
「……」
國男は緊張にからだを硬くする。
––––と、
「たららららら〜ん♪」
少女の歌声が、崩れかけた家屋に響き、
「ルルルルルルルルン♪」
楽しげな
「ショウちゃん!」
「な……ツッ!」
––––ボスッ!
なんで、ここに? と國夫が発する前に、彼女が抱きかかえていた大きな熊のぬいぐるみを顔面に投げつけられ、言葉を飲み込む。
「あ、危ないよッ!」
國男の後ろから顔を出して寅彦は叫ぶ。
––––が、それが聞こえているのか、いないのか、
「ふふふふん♪」
バシリスクの前に、鼻唄交じりでショウは立った。
––––ケケケケケケケケケケケケッコー!
怪鳥は
目を見開き、石化の呪いをかけんとした––––まさにその時、ショウの手から発せられた、ふたつの銀光が宙を走る。
吸い寄せられるように、その光はバシリスクの
––––ギゲゲゲゲゲゲッッッ!
聞くに堪えない濁音だらけの奇声を発しながら、のけぞる
「……!」
ぬいぐるみがぶつかって赤くなった鼻を押さえながら國男は見た––––バシリスクの両目それぞれに、短刀が深々突き刺さっているのを。
「すごい、ショウちゃん!」
寅彦は國男の背中から飛び出し、喝采。
ショウは、両腰に
「あああああっ!」
寅彦、また声をあげる––––今度は絶叫。
「……クゥ」
ショウが床に倒れてしまったのだ。
巻き髪を揺らしながら、ドレスのすそをはためかせながら、糸が切れたあやつり人形のように、ことり、と静かに崩れ落ちる。
「––––助けなきゃ!」
國男と寅彦が踏み出したとき、大きな影が、風をはらんでふたりの脇を素早く駆け抜けていく。