第6話
「……呪い? 死? 砂?」
非現実な言葉の連続に、
鼻で笑い飛ばそうとしたのをすんでのところでおしとどめたのは、
「大丈夫、この
赤から青、そして白から、もはや透明になるのではないかと思えるほど急速に顔色を失う升に、寅彦ははじけるような明るさで答える。
手を伸ばし、背に負った名刀を抜こうとする––––が、やはり引き出せない。何度か繰り返すが、やはり抜刀できなかった。
「かせッ!」
升は寅彦の手を払いのけると、厚藤四郎の柄をにぎり、鞘から抜く。
––––キィィィィィィィィィィン!
白刃が鳴く。
寅彦を床に放り投げ、バシリスクへ向きなおり、にらむ。
「あと三秒だっけ? 充分だな!」
何かに
「このチキン野郎、ゴーゴーヘルだ!」
叫びながらバシリスクへ斬りかかる。
……若き日の正岡
「いくぞ、ゴラァ!」
寅彦の背から抜いた短刀––––厚藤四郎をにぎりしめ、巨大鶏––––バシリスクの、その血の色をした目をにらみつけて、升は
いざ斬りかからんと、一気に踏み出す––––ことができなかった。
「……!」
……両足が石になっていた。
「ちょ、まっ!」
石化の波は一気に
「……!」
金之助さんと同じように、升も
「あっちゃぁ〜、ヤツの目を見ちゃダメでしょ!」
手の平でピシャリと自分の顔を叩く寅彦。
バシリスクには、にらんだものを一瞬で石化させる呪いの力がある––––そう
「だっからぁ、目をつむれっていったのに、この
––––コケッコココココココココッ!
寅彦のあきれ声を聞いて、バシリスクは
ビリビリと世界が揺らぐ。
痺れる鼓膜に寅彦は顔をしかめると、
「ちくしょう!」
バシリスクの股下へ頭から飛び込む。
ぐるぐると前転しながら寅彦は
「何やってんの!」
起きあがった寅彦の尻に食らいつこうと牙を伸ばしてきた大蛇の頭を、手にした短刀––––
「早く刀抜い……てるね……って、あれ? 厚藤四郎は?」
「……石になっちゃった」
ぼそりとつぶやくと、寅彦はささっと國男の背中にくっついた。