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ピロシキは身震いした。
「あんたがあっしを殺すんでやんすか?」
震えた声でそういった。
「うん」
「殺せるんでやんすか?
人を殺したことあるんでやんすか?」
「ないけど。
殺す。
ナイフで首を斬れば死ぬでしょ?」
「できるんでやんすか?
そんなことが……!」
ピロシキの手にナイフが現れ素早く亜金を目指し刺さろうとした。
「僕にはできるよ」
「ナイフが動かない?」
ピロシキが驚く。
「僕に触れようとしたからさ。
僕は僕に触れようとしたモノ全てを自分の武器に変えれるんだ」
「へぇ……」
するとアザゼルがピロシキの頭を杖で叩く。
「謝るのじゃ」
ピロシキは、少し間を開けたあと小さく頭を下げた。
「もうしわけありませんでした」
「はぁ、一花。ジョーカーすまないな。
ワシの方からも謝る」
アザゼルが、ため息混じりに謝った。
「いや、気にしなくていい。
だが、亜金の目が……」
ジョーカーの言葉を聞いた僕は亜金の方を見る。
亜金の目が黄金色に輝いている。
「能力が発動しているんでやんスよ」
ピロシキが、そういうと亜金は崩れるように倒れた。
そして、その身体をピロシキが支える。
「ピロシキ!あなたあっくんになにをしたの?」
一花が、そういうとピロシキが小さく言った。
「能力が開花して間もないときは魔力の消耗が激しいんっす。
人間でやんすからね。
そこのボクくんと違い、魔力コントロールは上手くないんっす」
ピロシキが、そういってボクの方を見る。
「魔力?僕にも魔力があるの?」
ボクの質問にピロシキが答える。
「気づいていないんっすね」
「え?」
「いや、なんでもないでやんす。
亜金くんを医務室に運ぶでやんす。
そろそろ勇者たちもこのアンゲロスにくるでやんすよ」
「勇者?」
一花が首を傾げる。
「ああ、そうじゃった。
ですますスイッチをここに呼んだんじゃった。
ボクのことを知っているやつらなんでな」
アザゼルがそういって優しく微笑んだ。