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「明るく元気にいきましょう」
それは、ボクが生前。
両親に遊びにつれていってもらえた唯一の場所である笑点の前座の一コマだった。
芸人の名前は、ピロシキ。
ボクは、今までその言葉。その存在を忘れていた。
ウクレレ片手に公園の中で奏でている。
その音、そのメロディ。
それはボクが知っているそれそのものだった。
「道を歩いていたら。
女の子に声かけられ。
これが世にいう逆なんかと思ったら。
変なツボを買わされました。
明るく元気にいきましょう」
だけど、病的に面白くない。
あのときは無邪気に笑ったっけ?
ボクはそんなことを思いつつ言葉を続ける。
「明るく元気にいきましょう。
生きているだけで丸儲けと思っていたら。
銀行強盗に眉間を撃ち抜かれ……
あっというまに死んじゃった」
ボクの表情が固まる。
青年がゆっくりと車に近づいてくる。
「なに……?でしょうか?」
紅鮭が少し怯える。
そして、ゆっくりと青年が車のドアをノックする。
「無視したほうがよくない?」
プレゲトンがそういうと紅鮭がうなずく。
しかし、ボクは窓を開ける。
「ちょ!なにしているの?」
プレゲトンが慌てる。
「……」
ボクの表情は変わらない。
「ボク?」
プレゲトンがボクの目を見る。
「チャームされてる!?」
プレゲトンがそういうが少し遅かった。
青年が、ウクレレを鳴らす。
「明るく元気にいきましょう。
実はおにぎりが嫌いだけど。
紅鮭は好きなのに。
つい嫌いと言ってしまう。
明るく元気にいきましょう」
すると紅鮭の動きも止まる。
「紅鮭!?
車出して」
「無駄っすよ。
あっしのギャグで笑わなかった人は、あっしの操り人形になるんっすよ」
「あははは!なに?その滅茶苦茶な能力は!?」
プレゲトンが、何故か笑う。
「へ?」
「明るく元気にいきましょう。
三剣三姉妹と言われているけれど。
性格もバラバラで散見三姉妹と言われている。
あ、困った困ったー
あー、明るく元気にいきましょう」
「え!よく知っているわね!あははは!」
プレゲトンのツボに入る。
「な、なんで……?」
青年が戸惑う。
「ま、話は奥で聞こうかしら?」
一花が、ゆっくりと現れ青年の後ろに現れる。
「えっと?」
そして、青年は一花に捕まった。