最終話
屋根の
「おっらぁぁぁぁぁ!」
––––ザァァァァン!
追いつくなり
「しゃぁぁぁ!」
––––カキィィィン!
栄子はふり返ることなく、
「ちぃぃっ!」
錦、素早く握る手を動かし、刃を横にして反動を殺し、さらに加速。栄子と横並びになる。
––––その瞬間、
「せいやぁぁぁ!」
––––ブゥゥン!
今度は錦の足元を蜻蛉切りが強襲。
「––––っつあぁ!」
風
「甘い!甘い!甘い!甘いっっ!」
栄子は柄の腹で受け止め、押し返し、顔面めがけ突き込む。
錦もまたそれを石突で弾き、反撃––––二人の少女の長槍の技量は
互いに一歩も譲らないまま、やがて
「……っっっ」
恐ろしい勢いで飛んできた角材の直撃を受けて失神していた
赤く
「……あの
自分の目の前で、いきなり派手なケンカをおっぱじめたふたりの姿を探す……までもなく、見つかった。
参道を行く人々が、
「おい、あっちだ!」
「何だありゃ!」
「急げ、急げ!」
と、騒ぎ立てては、本殿の方へ押しあいへし合い流れていた。
「……いっ!」
彼は目と口をまろくする。
––––浅草寺の本殿屋根に、ふたつの影。
長大な得物を、振り上げ振り下ろし、突き込んでは弾き返すを繰り返していた。
「……い、一体全体どういうことさ?」
あんな所に登ってまで争っている、その理由を知りたい––––美妙、駆けよりたい衝動にかられる。
が、仲見世通りはすでに野次馬たちであふれかえって、こちらから本殿には近寄れそうにない。
「急げば
彼は一度外門を出て、大きく迂回する道を駆けるに駆けた。
案の定、あっさり本堂の裏手に出ることができた––––が、そこで、彼はぎょっとした。
見あげた屋根の上で
––––鎧武者がそこにいた。
ゆっくりと視線を浅草寺の屋根から、美妙に移す。
日本人ではない。
はるか海を渡ってきた、西洋人であった。
さらに美妙か
––––左右の瞳の色がちがった。
右の目は澄みわたった大空のように青く、そして右目は––––沈みゆく太陽のように真っ赤。
「
甲冑姿の西洋人も、左右色のちがう瞳を持つ人間も、美妙ははじめて見た。
金髪武者の、その総身から立ち昇る殺気に似た威圧感に、好奇心より恐怖心が先立ち、うるしをぶっかけられたように両足はその場に固まり、美妙はむなしく口をパクパクと開閉するだけであった。
金髪武者が
「……!」
美妙は小さく身じろぐ。
いまの彼にはそれしかできなかった。
武者は、すうっと通った高い
赤い右目だけで美妙を見て、
「……あなたもか」
そう、つぶやく。
英語、それもかなり
右手を顔からはなし、左腰へ流れる
「––––
美妙は叫ぶ。
声は出た。
だが、足は地に根を張ったかのように、ピクリとも動かせなかった。
「持っていろ」
武者は刀を鞘ごと抜くと、それを美妙に投げわたす。
放物線を描いた二尺(六十センチ)の刀は、美妙ののばした両腕のもとへ。
「うわっとっと!」
ずしりと鉄の重みがのしかかる。落とすまいと、美妙は腕と胸でしっかり抱きかかえた。
「ショクダイキリミツタダ」
と、武者は言う。
「ショク……ダイキリ⁉︎」
脳内で日本語に変換できず、美妙は
「『
金髪の鎧武者は、