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女神降臨!って、私は人間だっつの。

「おお!! なんと美しい女神!!」

「女神様!!」

「どうか我らに救済を!!」

 突然、よってたかって人の事を女神だとかキューサイの◯汁だとか言ってくる、この白い爺さんたちは一体なんなんだろう。夢? 仕事のストレスからくる夢?
 ごめん。青◯は言ってなかったね。盛っちゃってサーセン。

 過呼吸気味になってる白い服きた爺さんたちによると、どうやら私は神の国と呼ばれる場所から降臨した女神らしい。神の国はニホンとかジャパンとかハポンとか呼ばれてて、科学と呼ばれるものが発達した高度な文明を誇る国らしい。
 そんな神の国から女神の降臨を祈ったのは、今まで存在していた魔獣と呼ばれるものが、ある日突然強くなったそうだ。
 国には軍隊もいる、ハンターと呼ばれる魔獣を狩る人達もいる、なのに熟練者である彼らもまったく手が出ない存在になってしまったのだ。
 それでも一部の人たちは対抗できるけど、圧倒的に数が足りない。

「そこで、神頼みって訳か」

「も、もうしわけ、ございませぬ……我らにはもう、魔獣を食い止める力が残っておりませなんだ……」

 一番髭の長い爺さんが、ぷるぷる震えながら私に訴える。
 分かる。分かるよ。
 気持ちは分かるけど、そうは言っても私は普通の人間だ。
 中小企業の事務員でアラフォー、お局って呼ばれるくらいに会社勤めが長いけど、ごく普通の人間なのだ。
 顔は普通、身長も女性の平均、体重も平均、スタイルも平均……だと思いたいそんな存在だ。

「何をおっしゃります!! 女神様の美しさは、この世界中探しても上回る者はおりませぬぞ!!」

「はぁ……」

「ここに若い男を置かぬのは、女神様に良からぬ心を持たせぬため。若い女でさえ女神様に対してどのようなことになるか分かりませぬからな」

「はぁ……」

 爺さんの言葉の意味がさっぱり分からなかったけど、それが理解できる日はすぐにやってきた。
 降臨?した場所は神殿だったみたいで、爺さんの神官しかいなかった。それでもこの世界に慣れるため一週間隔離されて、常識とかの勉強もさせられて、いよいよお披露目となった日に驚愕の事実を私は知る。






「おお……女神様……」
「なんと……」
「ああ……はあぁ……」

 女神のお披露目と称して王国であるこの国の中心である王都に呼ばれた私は、そのまま王城に通された。
 謁見の間と呼ばれる、よくある赤い絨毯が真ん中に敷いてあり、奥には偉そうな人たちがいる場所に私は恐る恐る足を踏み入れる。
 すると、一歩進むたびに大きなため息やら、呻き声やらが聞こえる。
 今の私の格好は、いかにも女神といった一枚の白い布で体を覆っているだけだ。恥ずかしいとは思ったけどこれが女神の正装らしくて、他に服がもらえなかった。まぁ、なぜかこの布は暑くも寒くも感じないし、布も汚れなければ裸足で土の上を歩いても足が汚れないから重宝してるんだけどね。
 そんな羞恥プレイを経て、王様らしき人の前に立つ。
 礼儀を知らない訳じゃない。一応女神だから、膝をついたらダメなのだと爺さんが言っていた。この世界でやっていくには、爺さんの言うことを聞いておいた方がいいだろう。マナーみたいなものだけは、とりあえず従っておこうと思っている。
 それにしても、周りの呻き声とかハァハァしてる音とかうるさいなぁ。

「女神、お会いできて光栄だ。その麗しき黒髪にクリーム色の肌、伝承どおりのお姿だ」

「ご降臨、感謝いたしますわ」

 王様とお妃様っぽい男女に目の前で跪かれる。ダンディーな髭のオジ様と綺麗なお姉さんって感じだ。服装は男性は軍服みたいな感じで、女性はフリルをふんだんに使った裾の長いドレスだ。おとぎ話のファンタジーな世界って感じだよね。

「私に何を望むの?」

 話し口調は適当にすることにした。キャラを作ってもボロ出しそうだから。

「我らが魔獣に対抗する術を」

「術? それだけでいいの? 魔獣を一掃しろとかじゃなくて?」

「今回のことは我らの力不足で起こったこと。一部のハンターは対応できているが、情けないことに我が国の軍は、あの魔獣にまったく歯が立たなかった。とにかく早々に対応せねばならんため神官に頼んでしまったが、女神からすれば呼ばれて迷惑だったことと思われる。どうか許してほしい」

 へぇ、そう思っているんだ。私は冷めた目で跪いたままの王様を見る。
 この世界に来た日から、二、三日は泣いた。
 爺さんたちは神の国に戻せるか分からないって言うし、伝承では女神は地上で暮らしたってなっているってことだったから。元の世界にいる家族が悲しむだろうと、本当に辛かったんだ。

「神官たちには、神の国に戻す方法を探させている。時間がかかるやもしれぬが、待っていてくれ」

「許す、とは言えないわ。その方法が見つかった時に謝罪を受け取ることにする」

「承った」

 ここで私は謁見の間を見回す。王様の家臣と思われる人達が並んで立っていた……らしいけど、なんか皆座り込んだり、ぐったりした顔をしている。どうした家臣たち。しっかりせい。

「女神の神気に当てられているのだろう。我ら王族でも辛いものがある」

「え? そんなの出てるの?」

「修行を積んだ高位の神官であれば別だが、普通の人間にはいささか強すぎるようだ」

「ふぅん……あ、そうだ。ちょっと見たいところがあるんだけど」

「なんなりと。女神よ」

「王国の騎士とか兵士とか、軍の訓練しているところを見たいのよね」

 なぜ、とは王様は聞かなかった。
 きっと魔獣討伐に役立つだろうと思ったのかもしれない。すんなりと了承すると、必ず神官を連れて行くように言われた。まぁ、爺さんずは元気だから、ちょっとくらい歩き回っても大丈夫だと思うけど……。

「……楽しみ」

 気がついたら、私は笑顔になってたみたい。
 この世界にきて初めてかもしれないな。心から笑えたのは……。

「女神の笑顔……もう、限界、だ……」

 あ、ダンディー髭王様が沈んちゃったよ。ごめんね。
 神気って、出さないようにできないのかしら?



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