プロローグ 《静かな英雄》
__むかしむかし、神々の創世記、神の中から邪悪な力を持った神が現れた。
神々は世界を創生したばかりで力がほとんど無く、邪悪な神に対抗できずに負けてしまう。
邪悪な神は作られたばかりに世界を自分だけの物にしようと邪悪な力を使い、部下となる魔族を生み出し、まだ誕生したばかりに知性の芽生えきっていない人間を襲わせる。
折角作った世界を好き勝手されることを嫌がった神々は力を合わせ四人の使徒を作った。
四人の使徒。後に英雄と勇者と言われる『アルファ』、攻撃魔法の開発者『シータ』、シータの兄妹で回復魔法の開発者『ゼータ』、技の探究者『ガンマ』。
そして、この四人と共に邪神討伐に参加する邪神の兄弟神『イプシロン』。
彼らは苦楽をともにし、仲間を失いながらも邪神『ウプシロン』を倒すことに成功した。
しかし、生き残ったのはアルファとガンマの二人だけ……。
その上、アルファは邪神の死に際に呪いをかけられてしまう。
それは『不老不死』と『喋ると死ぬ』という呪い。
不老不死で死ねないアルファは、喋るたびに全身を針で刺されるような激痛に襲われる。
アルファは『絶対宣言』という言った事を絶対にする力を持っていたが、この呪いのせいでほとんど使えなくなってしまう。
そして、ガンマと別れたアルファは一人、昔修行をした山で暮らし始めた。
__これは、その数百年後のお話…………。
~α~
「__きゃあああああああ!!!」
とある森の中、甲高い女性の叫び声が響く。
いつものように薪割りをしていた『アルファ』という少年は驚き、声のした方角を見た。
向いた方向の先には、森の中でも危険な肉食の獣が群れで暮らしている地帯があった。
「……」
嫌な予感がする。
アルファは近くに置いてある杖を持ち、叫び声のした方向に走り出す。
森に長く住んでいるアルファは最短の距離を選択し、叫び声のした場所に向かう。
「グルルル……!」
「……!」
叫び声のした場所に着くと、そこには傷だらけで倒れている少女と少女を囲む狼の群れを発見する。
「たす……けて……」
少女が駆けつけたアルファを見て、かすれた声で言った。
アルファは一瞬迷うが、すぐに狼達の近づいた。
少女の意識は無くなってしまい。傷の深さからも早く治療をしないと間に合わないとアルファは判断した。
「____『散れ』」
アルファが言った瞬間、狼達は毛を逆立てて四方八方に散っていく。
「っ!!」
アルファはその場に膝を着いて、全身を襲う痛みに耐える。
その痛みは数秒続き、少しずつ引いていく。
痛みが引くと、近くに倒れている少女を背負い。急いで自分の家まで戻る。
「う……うう……ぅ」
アルファは家に着くと、自分の寝室のベットの上に少女を寝かせる。
痛みでうなされる少女の傷の深さを確認し、薬草などを保管している棚から一番良い物を選ぶ。
その薬草には痛み止め、鎮静剤、出血を止める作用がある。
「いッ……!」
痛みで一瞬顔をしかめる少女だが、この薬草は即効性が強い為すぐに表情はほぐれる。
出血は止めたが傷が深すぎるため気休め程度にしかならない。
アルファは歯を食いしばりながら、少女の傷口に手を当てる。
「____『治れ』」
少女の傷口がみるみるうちに治っていく。
そして、アルファは全身を襲う針で刺されるような痛みに悶える。
アルファは、そのまま痛みで気を失ってしまう。