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「愛々。愛々
 オサールさんだよー」

 男が小さく歌う。
 そして、空を見上げる。

「懐かしい歌じゃねぇか」

 別の男がそういって笑う。

「なんで今さらそんな歌を歌うんだい?」

 女が尋ねる。

「なんだろうな。
 なんとなく思い出したんだ」

「ふーん。
 ジャキにもそんなことがあるんだねぇー」

 女が笑う。

「ベラにはないのか?」

「ないね」

 女がそういうともうひとりの男も笑う。

「俺もないな」

「そうか」

 すると中年の男が現れる。

「ジル、ジャキ、ベラ。
 テオスの基地がわかった。
 これより襲撃するぞ」

「OK!親父!」

 中年の男の名前は、デスペル=ジルベルト。
 魔法を無効化させる能力を持っている。
 現ダークグラムのギルドマスターである。

「さぁ、ちゃっちゃとテオスを倒して美味しいもの食べようさね」

 ベラが嬉しそうに笑う。

「いいねぇ」

 ジルが、そういって嬉しそうにうなずく。

「……ああ」

 ジャキは、小さくうなずいた。
 気になることがあった。
 どうして自分がこの世界に着たのか。
 自分が死んだのか。
 それとも殺されたのか。
 あの日、なにが起きたのか……
 ジャキには前世の記憶がある。
 ジルやベラは、どうなのか?
 顔や名前や声は同じ。
 ジャキも最近まで記憶を失っていた。
 最近になって記憶が蘇った。
 すべて思い出したわけじゃない。
 断片的に思い出す記憶。
 先程の歌も、何気なく思い出した歌だ。

 ジルは、懐かしい歌だと言った。
 なら記憶はあるのか。
 なら覚えているのか。
 ボクという少年のことを……
 ジルはボクの存在を思い出そうと頑張っているものの名前しかわからない。
 ただボクの存在を思い出そうとすると罪悪感が溢れる。

「ジャキどうした?」

 デスペルが、ジャキに尋ねる。

「なんでもない」

 ジャキは、そういって歩き出す。
 なんでもないはずはない。
 前世の記憶をあるということは、咎人だ。
 この世界では異端な存在。
 それをジャキは知っていた。
 だから、誰にも相談できない。
 ただただ探すことにした。
 ボクという存在を……
 そしたら、自分が咎人になった理由がわかる気がしたから……

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