35
そして運命の日がやってくる。
「いきなり実践なんですか?」
ボクは、新一に尋ねた。
「んー実践というかなんというか」
ボクたちの周りには沢山のモノたちが囲んでいた。
男や女、魔力の高いものたちが集まっている。
「こいつらなんだ?
この魔力の感じ人だよな。
テオスの部下か?」
灰児が、そういって大鎌を召喚し構える。
「む?そなたらはですますスイッチの勇者か……?」
大柄の男がそういって灰児たちに近づく。
「デスペルか?」
灰児が、鎌を降ろす。
「お前ら!武器を降ろせ!」
デスペルがそう指示を出すと猛者たちは武器を降ろした。
「どういうことだ?親父!」
ジルが、デスペルに尋ねる。
そして、ボクはジルを見た。
ボクの身体が震え上がる。
「どうして君が……」
ボクの頭が混乱する。
「ああん?なんだテメェ」
ジルがボクを睨む。
「やめておけジル」
ジャキが止める。
ジャキはボクをひと目見たとき思い出す。
自分がボクになにをしていたのかを……
今になって思う。
酷いことをしたと。
それは、ボクが射殺されたとき感じた思い。
それを思い出した。
「なんだ?ジャキ!
お前コイツの知り合――」
ジルが、そこまで言いかけたときデスペルがジルの頭にチョップをした。
「うるさいぞジル」
「なんだよ!親父!お前までコイツの――」
デスペルが再びジルの頭にチョップする。
「灰児、あえて聞くがここはテオスの基地じゃないのか?」
すると灰児がため息混じりに言った。
「なんだそれ?俺らは――」
灰児がそこまで言いかけたとき大鎌を構える。
するとデスペルも大剣を構える。
そして、大きく後退する。
「ふぉふぉふぉふぉふぉふぉふぉふぉ」
老人の笑い声がこだまする。
「何者だ!貴様!」
デスペルが、そういってなにもない空間に剣圧をぶつける。
するとボクにも見知った老人の姿が見える。
「フィサフィーさん?」
ボクが、そういうと老人が笑う。
「そうじゃ、フィサフィーじゃよ。
ボク、迎えに来たぞ」
「え?」
フィサフィーの言葉にボクは驚く。
「ワシとともに来い」
ボクの前に新一と裕也が前に出る。
「お前のところにボクは渡さない」
「ククククク。
なにタダとは言わん。
主を苦しめたジル、ベラ、ジャキ。
この3人を殺してやろう」
フィサフィーがそういうとジルが睨む。
「ああん!
お前みたいな爺さんに殺されるかってぇの!」
ジルが刀を召喚し構える。
「クククク。
相変わらず口だけは達者だの」
「相変わらず……?」
ジャキが記憶を探る。
どう探してもフィサフィーとジルの接点が見つからない。
もちろん自分もだ。
「ふぉふぉふぉ。
こちらでは、はじめまして……じゃな。
ジャキ、ベルとは」
フィサフィーは嬉しそうに笑う。
「俺もお前なんか知らねぇぞ!」
ジルがそういうとフィサフィーは笑いながら答える。
「こちらの世界ではのぅ。
初めましてじゃのぅ」
「……こちらの世界?」
ジルが首を傾げる。
「ふぉふぉふぉ。
こちらの世界じゃ。
まぁ、どっちでもいい。
主は死ぬんじゃ、ボクの手によってな!」
「え?ボクが……?」
ボクにもフィサフィーがなにを言っているかわからない。
「まぁ、お楽しみはこれからじゃて」
フィサフィーが、姿を消す。
するとボクの後ろに移動していた。
「な!」
新一と裕也が振り向こうとした瞬間。
威圧的な風により吹き飛ばされる。
「く!」
灰児は、なんとかその風に耐える。
デスペルもまた耐える。
「なんだテメェは!」
「フィサフィじゃよ。
ジル」
フィサフィーがそういってボクに刀をもたせた。
「え?」
「さぁ、その刀でジルの胸を刺すのじゃ」
「どうして?」
「主は殺したいほど憎んでいるのじゃろう?
ジルのことを」
「そんな」
ボクは戸惑う。
「いいんじゃよ。
殺しても、どうせこの世界でも虐めるぞ?
あやつは……主のことを」
フィサフィーが、そういうとボクはそんな気になってきた。
「ダメだ!ボク!そいつの言葉に耳を貸すな!」
灰児が叫ぶ。
「え?あ……うん」
ボクは、うなずくとフィサフィーがボクの頭を撫でる。
「今は殺したくないのならいい。
なら、ワシとともに行くぞ?」
「どこにですか?」
「咎人の集う街へじゃ」
そして次の瞬間。
フィサフィーとボクの姿は消えていた。
「くそ!完全に油断した!」
灰児が、大鎌を地面に突き刺した。
「大丈夫?新一。裕也……」
ピノが震えながら尋ねる。
「ああ。大丈夫だよ」
裕也が小さく笑う。
「これは参りましたね……
まさか、テオスの幹部。
フィサフィーにさらわれるとは……」
新一が頭を抑えてふさぎ込む。
世界は丸く。
そして、いつだって残酷だった。