バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

31

「さぁ、そろそろ着くよ」

 新一がそういったのは、ボクが街を出て数時間後のことだった。

「ここですか?」

 ボクが疑問に思うのも当然だった。
 見た目は普通の大きな館だった。

「そうだよ。
 立派な建物だろう」

「はい」

「じゃ、入るよ。
 もう来ているかわからないが、君が会うべき人がいる」

「会うべき人?」

 ボクが首を傾げる。

「君にレベルを授ける人さ」

「レベル?」

「そうレベル!
 君の今のレベルは1さ。
 だが、レベルが上がるようになれば総合力があがり戦力になる可能性も――」

 新一がそこまで言いかけたときふと気づく。
 ボクの隣でじっと座っている少女ピノの存在に。

「うんうん、ボク。
 ピノを殺せばレベル上がるよ?
 さぁ、殺して!」

 ピノが、そういってボクの方を真剣な眼差しで見る。

「え?殺さないよ?」

 ボクが、そう答えるとピノはがっかりしたように肩を落とした。

「うぅ……」

「だから、ピノちゃん言ったろ?
 ここには、君を傷つけるものはいないって」

 裕也が苦笑いを浮かべながらそういった。

「おかえり、戻ってきたんだね。
 裕也くん」

 新一がそういうと裕也が答える。

「うん、ただいま。
 ほかの人たちは?」

 裕也がそういうと赤髪で長髪の男が現れる。

「俺がいるぞ」

 耳にピアスを付けた男にたいして、ボクは少し苦手な人だと思った。

「……灰児くん。
 君にしては早いね」

「おうよ。
 女を待たせることだけはしちゃいけねぇ」

 男の名前は、南野 灰児。
 ですますスイッチベースで担当をしている。

しおり