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「さぁ、そろそろ着くよ」
新一がそういったのは、ボクが街を出て数時間後のことだった。
「ここですか?」
ボクが疑問に思うのも当然だった。
見た目は普通の大きな館だった。
「そうだよ。
立派な建物だろう」
「はい」
「じゃ、入るよ。
もう来ているかわからないが、君が会うべき人がいる」
「会うべき人?」
ボクが首を傾げる。
「君にレベルを授ける人さ」
「レベル?」
「そうレベル!
君の今のレベルは1さ。
だが、レベルが上がるようになれば総合力があがり戦力になる可能性も――」
新一がそこまで言いかけたときふと気づく。
ボクの隣でじっと座っている少女ピノの存在に。
「うんうん、ボク。
ピノを殺せばレベル上がるよ?
さぁ、殺して!」
ピノが、そういってボクの方を真剣な眼差しで見る。
「え?殺さないよ?」
ボクが、そう答えるとピノはがっかりしたように肩を落とした。
「うぅ……」
「だから、ピノちゃん言ったろ?
ここには、君を傷つけるものはいないって」
裕也が苦笑いを浮かべながらそういった。
「おかえり、戻ってきたんだね。
裕也くん」
新一がそういうと裕也が答える。
「うん、ただいま。
ほかの人たちは?」
裕也がそういうと赤髪で長髪の男が現れる。
「俺がいるぞ」
耳にピアスを付けた男にたいして、ボクは少し苦手な人だと思った。
「……灰児くん。
君にしては早いね」
「おうよ。
女を待たせることだけはしちゃいけねぇ」
男の名前は、南野 灰児。
ですますスイッチベースで担当をしている。