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第十話

大悟はすべての視野が真っ白な場所にいた。屋根も床も壁もない場所。空間というスペースすらない、何もないところ。自分の姿が存在していることは観念的に理解できる。ただそれだけという感覚である。からだの認識があるのに、それがどこに存在するかはわからない。

「これが空間の意思というものですの?何もない場所ですわ。もしかしたら、ここではオレがひとりいるだけ?ならばこの世界の支配者となってしまったのかしら。空間の嫁って、超玉の輿?」

「それは違うよ。あたしは神セブン最強・最大の魔法美少女、弁財天だよ。通称、弁ちゃん、。『、』がチャームポイントだよ、しかし。」

「ゆ、楡浬様?」

 大悟の目の前に現れたのは楡浬そっくりの美少女。但し、赤いリボン付きの黒い帽子にピンク主体のフリル袖のシャツに、ベルベット地のフリフリミニスカートを当然のように身に着けて、星マークのステッキを右手に持っている。棒の部分に『家内安全』と書かれているところが神様っぽい。

「残念だよ。楡浬ちゃんじゃないんだよ。楡浬ちゃんのママだよ、しかし。」

「そのコスを除けば、楡浬様に実にそっくりの美少女。胸もないのは大遺伝ですわ。」

「バカにしたね!神セブンと言っても神シックスとあたしとでは全然レベルが違う。空間の創造主。いわば唯一絶対神。それが弁財天。通称弁ちゃん、。大事なことは2回言ったよ、しかし。」

「その特許的セリフ使用は親子ですわ。」

「創造主からみんな生まれてきたんだから、ある意味すべてが弁ちゃん、の子孫でもあるよ。でも楡浬ちゃんは特別だけど。時折、コトブキちゃんの真似をして、大悟ちゃんに話しかけていたんだけど、気づかなかったかな、しかし。」

「あれはあなただったんですの。ふつうの力ではないようですわね。オレは空間の嫁らしいですけど、どうして呼んだのです?不本意ながら、ほとんど人間でない存在のやっかい払いとして、ここに来たみたいですけど。」

「元男の女子、しかも今はオッパイ喪失中って、どんな存在なんだろうね、しかし。」

「どちらかというと今は女子細胞勢力に押されていますわ。」

「じゃあ、それをまず元に戻して。魔法美少女、弁ちゃん、の思いのまま、しかし。」

 弁財天は魔法のステッキを御幣のように振り回して、その先を大悟に向けた。星が大悟を煌びやかに包み込んだ。
 からだの上と下の大事な部分を入念にチェックした大悟。

「こんな簡単にできるんだ。おっ。言葉も復活できた。うれしい。男子として完全体になった。セルも死地から蘇ると完全体になったはず。こんなところで、歴史は繰り返されたんだ。オレは溺死の生き証人だ。」

「すでに言葉が死んでるよ。そのノリは大悟ちゃんらしいけど。だから楡浬ちゃんが好きになったのかな、しかし。」

「なんか、とっても大事なことをさりげなく漏らしたような気がするけど。」

「お漏らしは隠すのが乙女の恥じらいだよ、しかし。」

「言ってる意味がわからねえ。」

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