26
眩しい光が辺りを包み込む。
光が全てを焼き払う。
「グルルルル」
眩しい世界の中。
獣の唸り声だけがボクの耳に入る。
「もしかして、ゲルンガ?」
ボクの問いに獣は答える。
「違う。
私はカリュドーン」
「カリュドーンさん?」
「……そうだ」
「この光はなに?」
「すまないが、助けてくれ……」
「え?」
ボクにはなんのことかわからない。
ただ助けを求められた。
生まれてはじめて助けを求められた。
そのことに驚き。
そしてなにも出来ない自分を呪った。
「ダメだ逃げてくれ……」
カリュドーンが、そういったあと爆発するのがボクにわかった。
ボクのシールドが弾かれる。
そして、体中に痛みが走る。
「ボク!!」
白銀が、吹き飛ぶボクの腕をつかむ。
失いつつあるボクの意識。
僅かながら白銀の手のぬくもりを感じた。
――ウブス港
「光だ!あの光は!?」
船乗りたちが騒ぐ。
朝食を食べている13も驚いていた。
「なに?この魔力量は……」
それは座来栖も同じだった。
「これ孤児院の方じゃないか?」
「うん」
ふたりは、慌てて外を見る。
「座来栖ちゃん!13ちゃん!
お代はいいから院の方にいっておいで!」
そういったのは喫茶店オーナーのオカミさんだ。
「オカミさん、すまない。
ありがとう!」
「ありがとうございます」
座来栖と13は、オカミさんにお礼をいうと喫茶店を出た。
――詩空孤児院
「うぇーーーん」
幼い子どもの鳴き声が聞こえる。
「大丈夫……
大丈夫だよ!」
歩が、幼い子どもをなだめる。
「でも、お母さんが家の下敷きに……」
幼い子どもがそういってさらに涙をこぼす。
歩にもなにが起きたかわからない。
そばにいた詩空孤児院の仲間たちがいない。
「うーん。
これはこれは。
ひぃふぅ」
オーが、そういってメガネのクイッとうえにあげる。
「あー、オーさん!」
歩がオーの名前を嬉しそうに呼ぶ。
「ひぃふぅ。
大丈夫だよ。君!」
オーが、幼い子どもに向けて親指を立てる。
そして、瓦礫を持ち上げる。
するとうずくまっている、母親の姿を見つけた。
「あ……?」
母親が顔を上げる。
「さぁ!もう大丈夫。
出るんだなぁー、ひぃふぅ」
オーの言葉を聞いた母親は、一瞬安心した表情を浮かべたあとすぐにその場から離れた。
「お母さん!」
幼い子どもが母親の身体を抱きしめる。
「よかった」
歩がそういって小さく笑った。
「歩ちゃん、どうやら孤児院は僕らふたりだけっぽいね。
ひぃふぅ」
「みんなは、どこにいったの?」
歩の質問にオーが優しく答える。
「ひぃふぅ。
孤児院にいた人たちは何か強力な魔力により弾かれたって感じかな」
「弾かれたの?」
「ひぃふぅ。
そうさ、僕もかなり飛ばされたけど。
走って戻ってきたよ。
おかげで体重が10キロは減ったよー」
「タクさんや、ブーさんは?」
「わからない。
みんなバラバラになったからね」
「そっか……」
「それよりも人命救助しないと」
オーの表情が真面目になる。
「オー!これはいったい!」
すると少し遅れて座来栖と13が駆け寄ってくる。
「座来栖くん、13くん!」
オーが少し安心した表情を浮かべた。
「あの光の柱はいったい……」
座来栖の質問にオーは、首を横に振った。
「今は、怪我人をひとりでも死人に変えないように努力しよう」
13の提案に、みんながうなずいた。