27
ボクが目を覚ましたとき。
辺りは炎で埋め尽くされていた。
「あれ、白銀先生?」
ボクは頭を抑えながら周りを確かめる。
「って、なにこの火は……」
ボクの視界がやがてはっきりと映るようになる。
「……え?」
周りには誰もいない。
遠くの方で人のうめき声のようなものが聞える。
ボクは駆け寄りうめき声をあげている人の方に駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
返事はない。
もううめき声は聞こえない。
ボクは、この人が死んだことを理解した。
「なにが起きているんだ……?」
ボクは、森を抜ける。
そして街に降りる。
街は悲惨な状況だった。
もうそれは街ではなかった。
火の海だ。
助かったモノが必死で消火している。
それでも追いつかない。
「いったい誰がこんなことを……」
ボクが呟く。
「生き残りか?」
見知らぬ男がいった。
「なんだ男か」
「つまらんな」
ボクはとっさにその男たちが敵であることを瞬時に理解した。
ボクは間合いを取る。
「む?コイツは……」
細マッチョの男がボクの顔を見て笑う。
「どうした?」
チビマッチョの男が細マッチョの男にいう。
「この顔良く見てみろ。
手配書の男だ」
デカマッチョの男がボクの方に指を向ける。
「手配書?」
ボクは首を傾げる。
「ああ、本当だ。
つかまえるとフィサフィーさまに好きなだけ金と女が貰えるぞ」
チビマッチョが嬉しそうに笑う。
「今日は女片手に宴会だな」
デカマッチョの男が火を吐く。
ボクは、シールドを保ちつつ間合いを開ける。
「ははは!こいつビビリだな!
こんな弱攻撃にシールドを貼ってるぞ!」
チビマッチョがそういって笑う。
「まぁ、火には警戒しているんじゃないか?」
細マッチョの男がそういってナイフを投げる。
「ククククク。
我ら兄弟の力に怯えているのか……?」
ボクは会話の内容からこの男たちが、フィサフィーの部下であることを予想した。
フィサフィー。
昔会ったときは、気の良さそうなおじいさんって感じだった。
しかし、それが演技であったことを清空から教えてもらった。
今ならわかる。
それが、どんなに恐ろしい存在なのかを。
ボクは、魔力をさらに込めシールドの精度を上げた。
「シールドの濃度が濃くなったぞ。
やっぱビビっているんだな」
デカマッチョが、そういうと手に棍棒を召喚するとボクの方に向けてぶつけた。
ボクの身体が後退する。
「はははははは!
いつまでシールドを保ってられるかな?」
チビマッチョがそういって剣でボクのシールドを破壊しようと斬りつける。
「なかなか硬いシールドだな。
だがすぐに魔力は切れるだろう?」
細マッチョがそういってナイフを投げつける。
ボクの魔力が切れる。
それはボクにはありえなかった。
なぜならスタミナと同じくボクの魔法量は即時回復だからだ。
大ダメージを受けたときでさえ、回復に時間はかかるものの再生する。
その容量で魔力も失えば失った分だけ即時回復。
魔力供給の集中力。
それは、白銀に鍛えられた。
白銀の修行はこれがメインだった。
「ダメージを受けないことがなによりもの助けになる」
それが白銀の口癖だった。
シールドを放ちダメージを与える。
それができれば一人前のシールダーになれると言われていた。
しかし、まだ成功したことない。
なにより連続攻撃を受ける中。
相手にダメージを与えるということは隙きを見せることになる。
それは、相手のレベルをあげ強くさせてしまうことになる。
だから、ボクはぐっと堪えた。
スタイナや消費した魔力は回復する。
なので疲れはしない。
ただ耐えるだけ。
ここはこの兄弟たちが疲れるのを待ち。
逃げる隙きを狙う。
勝つのは無理だ。
だから逃げる。
ただ、それだけ。