21
朝食を食べ終えたボクは、白銀に連れられ森に向かった。
森は、深くひとりだと迷うくらい複雑だった。
「あのここは?」
ボクは不安な表情を浮かべ白銀に尋ねた。
「ここは森だよ。
ただ普通の森」
「ここで修行するのですか?」
ボクの質問に白銀が白い歯をみせて笑う。
「そうだね」
「歩法でしたっけ?」
「そう!歩法・護りの章~逃げの形!
ただひたすら攻撃を避ける、歩法の基本の形で最も難しい技さ」
「ボクはなにをしたらいいですか?」
ボクの質問に白銀がうなずく。
「そうだね」
白銀が刃物でボクを襲う。
「わー」
ボクは、慌ててその刃物を避ける。
「ん!合格だね」
「え?」
「これを何度も繰り返す」
白銀は何度も何度も刃物をボクの方に向けては斬りかかる。
「え?え?」
「うん、攻撃を避ける筋はいいぞ」
「えっと?」
「でも、油断すると……」
カコン、ボクの頭に木の棒が当たる。
「痛い」
ボクが思わず声を出す。
「戦場で当たれば痛いでは済まない。
死ぬね。普通なら一撃で死ぬこともある。
でも、君の場合死ぬだけではすまない。
敵を強くさせるね。だから戦場に君は出せない。
だけど、どこで戦場がはじまるかはわからない。
だから僕は君に歩法を授ける。
君は君を護れるだけの技術と能力を身につけてもらう」
「えっとまず攻撃をやめてください」
ボクの願いを白銀は笑顔で返す。
「や・め・な・い・よ」
白銀の攻撃がさらに早くなる。
ボクは、それを避ける。
「えー」
ボクは白銀の斬道が何故か見えた。
見えるのなら攻撃を避けれる。
「お?」
白銀は、少し楽しくなる。
「白銀さん、楽しんでます?」
「うん、君は凄ね。
これだけ攻撃を避けても息切れしない」
「そうなのですか?」
「でも、これならどう?」
白銀は、ボクの腹部を蹴り上げる。
そして、ボクの頭を蹴り落とす。
「ぐへ」
ボクは、顎を強くぶつけ意識が失いそうになる。
でも、ボクはすぐに意識を取り戻し素早く白銀から離れる。
「ん?君はもしかして……」
「なんでしょう?」
白銀は、刃物を鞘に収めた。
「君は、フィサフィーとあったと言っていたね。
そのときに何かされた?」
ボクは、素直に白銀にフィサフィーにされたことを話した。
「――で、なんか僕は不死の力を得て16歳以上歳を取らないらしいです」
「不死の力……そうか、それは大変だ」
「え?」
ボクは、白銀の表情に不安を覚える。
「つまり君が悪人に捕まれば、不死の力を利用されて無限にレベルアップさせてしまうんだ。
拷問される可能性もあるね」
「……え?」
ボクの頭が一瞬で真っ黒になる。
「君は危険だね。
でも、安心してくれたまえ。
君は自分の身を守れる力を僕が授けるから」
ボクは思った。
白銀は信用できる大人なのだと。