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「む!主が、新人か?」

 黒い髪の男の子がそういってボクに近づいてくる。
 そのあとを赤い髪の女の子がついてくる。
 ボクは、恐る恐るうなずいた。

「うん」

 黒い髪の男の子が手を差し出す。

「余の名は大神 神(おおがみ しん)。
 余のことは親しみを込めてかみさまと呼ぶことを許すぞ!?」

 かみさまが、そういって笑う。

「あ、うん。
 よろしくかみさま」

 ボクは恐る恐る手を差し出そうとすると赤い髪の女の子がぐいっと引っ張る。

「私は、万桜。
 柊 万桜(ひいらぎ まお)!
 お母さんのような立派な勇者になりたくて勇者目指しているの!
 よろしくね!」

 万桜がニッコリと笑う。

「えっと」

 万桜がボクの腕をぶんぶんとまわす。

「あ、シエラ。
 新人か?」

 また別の男の子が現れる。

「そうだよ。
 焔、またここに来ているんだ?」

「おうよ!朝飯はここの孤児院の方が美味いしな!」

 焔と呼ばれる男の子が、りんごをかじる。

「……りんごはどこで食べても同じだと思うよ?」

「ここで採れるりんごは、世界一だぜ?」

「ふーん」

 シエラは興味なさげにボクの方を見た。

「このりんごをかじっているのが焔よ」

 シエラが、焔の紹介を簡潔にした。

「よ!」

 焔が、そういって手を上げる。
 ボクも手を上げてそれを返す。

「よ!」

 でも、そのあとどうしたらいいかわからない。
 ずっといじめられてきたせいか、それとも本質なものなのか。
 人との接し方がわからない。

「ほら、友好の印」

 焔がそういってりんごをボクの手に渡す。

「ありがとう」

 ボクは苦笑いを浮かべる。

「へへへへへ。
 美味いぞー
 お前も食ってみろ」

 焔が笑う。

「うん」

 ボクは小さく笑うとりんごをかじった。

「どうだ?」

「美味しい」

 美味しい。
 ただそれだけなのに涙が出た。

「ちょ!お前どうしたんだよ!」

 焔が驚く。

「ボクくんどうしたの?」

 シエラも戸惑う。
 どうしていいかわからない。
 ボクも皆もどうしたらいいかわからない。
 ただただボクは涙を流した。



「打ち解けると思うか?」

 清空が離れた場所から白銀に尋ねる。

「打ち解けるのが先か打ち溶かすのが先か……」

 白銀がそういうとしゃもじいがうなずく。

「あの子の眼の闇は深い。
 前世はどうだったか知らぬが奴隷として育った時間も知らん。
 じゃがわかっているのはあの子の眼は愛に飢えておる」

「そうだね。
 僕たちが護ってあげなくちゃね。
 君はどう思う?バルド」

 白銀が青年に尋ねる。

「どうしたらいいかなんか関係ない。
 ボクだかオレだが知らないが……
 こっからは、俺らが家族だ。
 アイツをいじめるやつはここにはいねぇ。
 【これまで】よりも大事なのは【これから】だろう?」

 男の名前は、バルド・バレット。
 酒と煙草と女が好きな男だ。

「相変わらず熱いね」

 13が小さくつぶやいて笑う。

「そう褒めるな!ってお前はこちらのテーブルよりあっちのテーブルの方がいいんじゃないか?」

 バルドが、そういって13の方を見る。

「……記憶操作が必要なときはいつでもいって僕の力を使えばボクくんの闇を封印することが出来るよ?」

「んー。
 俺は必要ないと思うがな。
 闇に明かりを照らすのに電気が必要か?それとも火が必要か。
 呪文の詠唱法を教えて魔法で照らすか……
 ま、正解なんてない」

 バルドはそういってジョッキにビールを注ぐ。
 そして豪快に飲み干した。

「そっか」

 13は、小さくうなずいた。

「13よ。
 主はいい意味でも悪い意味でも大人じゃな。
 じゃが、たまには無邪気に笑ってみるのはどうじゃ?」

 しゃもじいの言葉に13の瞳が暗くなる。

「ま、いいじゃねぇか。
 大人ぶるのも子どもの特権さ」

 バルドがそういって豪快に笑った。

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