03
入社式は、スピーチのあと会場を変えての立食パーティ。
はるかさんが、ニッコリと笑って僕にこういったんだ。
「自己紹介がまだ立ったね。
私の名前は、はるか。
春雨はるか。
気軽にはるかって呼んでね」
「僕の名前は、猫鍋 猫」
僕は、自信なさげにそう言った。
「じゃ、猫さんだね」
「変わった名前でしょ?」
僕の思いとは、反してはるかさんは、嬉しそうに答える。
「えー?なんで?私猫好きだよー」
はるかさんは、そう言って言葉を続ける。
「あ、食べ物をなにか持ってこようか?」
でも、僕は思った。
こういう場合、男がリードするんだ。
そうでないと男はモテない。
そう思って行動を出ようとする。
「じゃ、一緒に行こう!」
はるかさんは、僕の手を握りしめた。
女の子の手に触れたのは幼稚園以降で……
僕の顔が赤くなる。
「猫くん、顔が真っ赤だよ?」
「……ごめん」
あぁ、嫌われたかもしれない……
そう思ったけどはるかさんは、そうじゃなく。
「謝らなくていいよ?
あ、あれ美味しそうだよ!
行こう!」
はるかさんは、そう言って僕の手を引っ張った。