第二話
「コトブキちゃん。その浴衣、すごく似合ってるねぇ。デザインがロリっこ山姥キャラなんて、すごく斬新だよぉ。知識豊富で頭のいいキャラ設定なんだよねぇ。」
おかっぱ頭でピンクのフリフリミニスカを穿いて、ウインク+Vサインのまん丸目玉の美少女が、マサカリを振り回しているイラストを見つめる福禄寿。
「福禄寿よ。あんまり見るでない。は、恥ずかしいではないか。このババはこういうものは着馴れていないんじゃ。福禄寿もファイト一発電撃ちゃんの浴衣、見れないこともないかもしれないぞよ。」
「ひどいどす。おふくちゃんは、ウチだけを見てほしいどす。今日は頑張って、お相撲さん柄にしてきたどす。どすこい。」
四股を踏んだ大黒天を含め、三人寒女もお祭りに来ていて、道路側にいる。神様牛たちにもお祭りぐらいは浴衣OKというのが、校則にある。プライベートにも校則があるという神には厳しい時代である。
「久しぶりに自由を得たんだから、全力で楽しみたいねぇ。」
「そうじゃな。こんな夢幻のような時間ははかなく消えてしまうんじゃが、だからこそ、一秒一秒を大事にしないといけない。未来から振り返る過去は、すごく短くなって、記憶という無形の魔物に圧縮されて、やがては忘却というわずか2文字に閉じ込められてしまう。今を楽しむことは今しかできないんじゃ。」
「パンツに救いを求めてほしいどす!」
「うん、わかったよぉ。ダイコクちゃんの強いニーズに応えちゃうよぉ。」
「わあ!ありがとうどす、おふくちゃん。それじゃあ」
「パンツ救いより、金魚すくいだよぉ!」
大黒天の言葉を遮って、福禄寿は明るい露店の方に走っていく。
「うわ~いぃ。どんどん、釣れるぅ。」
意外にも金魚すくいが得意な福禄寿。おわんが溢れんばかりになってきた。
「く、悔しいどす。金魚に負けたどす。でも楽しげなおふくちゃんもかわいいどす。」
大黒天は福禄寿のそばに立って、金魚すくいに興じている福禄寿を見ていた。
「こうして、三人仲良く縁日を楽しむのは久しぶりじゃ。はて?縁日はこのババたちが自ら楽しむものじゃったかのう?」
道路に所狭しと露店が並んでおり、金魚の隣には、ひもくじ店があった。寿老人は、ひもくじをやり始めた。