03
人は死んでから49日間の間に次の世界に生まれ変わるかの裁判が行われるという。
この期間のことを仏教用語では中陰という。
ボクは、そういうのを全く信じていなかった。
だが、目の前でエンマ大王らしき存在が何かを言っている。
いわゆる次の世界の説明をしている。
ボクはどこに行くのかはまだ決まっていない。
別の世界には、6つあることを亡くなった祖父から聞かされていた。
天人が暮らす苦しみの少ない天上界。
そしてボクが生きていた人間界。
絶えず争いが続く修羅の世界。
本能のみで生きる畜生の世界。
絶えず空腹で苦しむ餓鬼の世界
罪を数多く積み重ね、その罪を償い続ける地獄と呼ばれる世界。
だけどボクにはわからないことがある。
ボクは、死んでから生まれて初めての勇気を出してエンマ大王に質問というものをした。
「エンマ様。
この世界は六道輪廻の中のどこの世界なのですか?」
するとエンマ大王が答える。
「この世界は、どこの六道輪廻の世界とは少し違う世界だ」
「六道以外にも世界はあるのですか?」
「四聖(ししょう)という世界もある。
これらは、仏の道を極めしものが行く世界。
人間界の中には、天国と地獄という教えがあるだろう?
天国に行くほどいいことはしていない。
地獄へ行くほどの悪いこともしていない。
そんなものたちが集まる場所に煉獄もある」
「……少しややこしくなってきました。
僕はどこに行くのでしょう?」
「ボクは、そのどこでもない世界じゃ。
主は業を背負い業を背負って生きてきた」
「業ですか?」
「呪いのようなモノだな。
主は特別で、記憶を残したまま次の世界に行く。
そして、その業を探し勤めを果たしたとき、人間界で再び修業の日々じゃ」
ボクの聞きたい返事は貰えなかった。
しかし、ボクの次の行き先は決まったようだった。
エンマ大王が、ボクの額に指を当てた。
そして、ボクの意識はゆっくりと閉じた。