ドラマチック展開絶対令
ある国を治める独裁者が居た。独裁者は刺激のない日常に退屈していたので、国民に劇的に生きることを義務付ける法律、通称『ドラマチック展開絶対令』を発布した。
このため国民は、落ち込んだら土砂降りの中、傘も差さず雨に打たれなければならない。結婚式では誓いのキスを妨害するように、別の男が殴り込まなければならない。労働者は上司の机に退職届を叩きつけなければならず、また、上司もその退職届を破り捨てなければいけない。などなど、生活のあらゆる出来事をドラマチックに盛り上げなければいけなくなった。酷い例になると、どうしてもドラマチックな展開が思いつかないので、友人と共謀して狂言立てこもりを演じた者さえ居る。
かくして、『ドラマチック展開絶対令』に苦しんだ国民たちは、最もドラマチックな展開である『武力革命』を起こし、独裁者を公開処刑した。