第三話「ギャンダモー大地に立ったり、立たなかったりする。」④
「これでも喰らえーっ!」
それまで、様子見に専念してたルーシュがギャンダモーへ向かって、アイスショットを集中砲火。
アイスショットの利点として、すぐに飛ばさずに溜め込んでおくことが出来ることにある。
その数、なんと16発! てっきり様子見に徹してたと思ったんだけど、戦闘開始からMPありったけつぎ込んで、溜め込んでいたらしかった!
ギャンダモーは、そのすべてをシールドで受け止める! ダメージはほぼ皆無……けれど、アイスショットの二次効果が発動し、シールドが氷漬けになる。
……弱点はシールド……ダニオの言葉を思い出したくないけど、思い出す!
今なら、発射口が塞がれてる……この状態で発射させれば……。
「うぉおおっ! 我が力のその真髄っ! 鬼神の力……とくと見よっ! 恐れを知らぬものはかかってこい!」
スキル「鬼士の構え」発動……両腕を組んで仁王立ちをすると、鬼をかたどったオーラが包み込む!
この時点で、攻撃力が強化されて、防御力が若干下がる……。
そのくせ、ヘイトをかき集めるので使い所が難しいんだけど、使い所としては今っ!
けれども、いつもと違い派生スキルが発動可能と表示される! 紅の鬼神モードってなんだろ?
迷わずそれを発動! いつもは黒のメイド服なのだけど、真紅を基調とした色合いへと変貌する!
三本のクローの付いたゴツい手甲とロングブーツ、赤いヘッドギアと赤いマフラー!
さらに、なんかおでこの辺りが重いと思ったら、ニョッキリと生えた角!
なんか私、変身したーっ!
各能力値が激増した上に、敵のヘイトも一気に増大する……これならば!
「ちょ! おまっ! ロゼたん、なに変身してんの! そ、その姿はまさか……赤い3倍専用ズゴッ……!」
馬鹿のツッコミとか無視っ!
……ギャンタンカーの砲撃が続けざまに直撃するけど、この程度! なんともない!
ギャンダモーハンマーの一撃を再び前に出たエストさんが受け止めてくれる!
……さらにハンマーの鎖を剣に巻きつけて、床に剣を突き立てて回収不能にさせる!
「エストさん! 上手いっ!」
「ここは私に任せて、今がチャンスよっ!」
いい感じ……これでハンマーは封じた!
攻撃手段を失ったギャンダモーが、氷漬けになったシールドを構える!
そして、次の瞬間っ! ギャンダモーは勝手に大爆発っ!
「狙い通りっ! ロゼさんやったぁ! ボクの魔法……やっと役に立ったよ!」
ルーシュの嬉しそうな声……でも、まだ!
ギャンダモーは左腕と左側の装甲の大半を失いながらも、まだ立っていた。
ピーガガーバチバチ! とか言って、火花撒き散らしてるけど……まだ動くよね? あれ。
そもそも、HPもまだ半分くらい残ってる……しぶといっ!
最後の悪あがきとばかりに、銃のようなものを構えると、こちらに向かって乱射してくる
「そんなもん、当たらなければどってことないーっ! 死ねぇっ!」
姿勢を低くして、一足飛びにギャンダモーの目前に着地、銃口を突きつけられたけど、左腕で跳ね除けつつ、そのままの勢いで右手のクローに全魔力を注ぎ込んでまっすぐ突き出す!
ブッピガンと言う音と共に私の腕はギャンダモーの腹を完全に貫通し、ギャンダモーは両手両足をピンと前に伸ばし、そのまま勢い良く吹き飛んで行く!
そのまま壁にぶつかって、しばしスパークした後、盛大に爆発っ!
爆風がこっちに流れてきたので、両手を付いて前かがみになって爆風を避ける。
ズギューンとか言う変な効果音と共に、なんか2000とか数字が浮かび上がる……なんだこの演出。
更に、ここぞとばかりにエストさんがギャンタンカーへ突撃! すかさず左手のクローを分離させて、ギャンタンカーの頭目掛けて射出!
やっぱり、ブッピガンと言う音と共に頭が爆発する! なんかクローが刺さったちっこいフルフェイス被った人型のがジタバタもがいてたけど、なにあれ?
「ロ、ロゼたん……今のシーン……再現度半端じゃない! もう紅の彗星とか名乗っていいよっ!
けど……甘いぞ! ギャンタンカーはコクピットが2つある! ハヤト・コバピーノが戦死したってドラゴン・ホセがいる限り! ギャンタンカーは落ちん! まだだ! まだ終わらんよ!」
どっち応援してんだこの馬鹿は! って言うか、そいつら誰なんだよっ!
ダニオが言ったとおり、ギャンタンカーはまだ戦えるようだった。
両腕の砲がエストさんを捉える!
けれど、絶妙なタイミングでルーシュのアイスショットがギャンタンカーの両腕の砲に直撃する。
例によって、ダメージは無かったようだけど、がっつり砲口が氷漬けになる。
向こうもギャンダモーの最期を見て、学習していたようで砲撃を一瞬ためらう。
アイスショットって火力としては微妙だけど、使い方次第で結構強いっ! ルーシュ凄いっ!
どちらにせよ、その隙が命取りだった……エストさんの渾身の一撃がギャンタンカーの腹部を刺し貫く!
やっぱり、ブッピガンって聞こえたよ? これって、こいつらの断末魔なのかなー。
そんな謎の効果音だか断末魔と共に、ギャンタンカーはバチバチと放電しつつ、その両腕が力なく垂れ下がる。
そこまで見届けると、剣を抜くと、振り返って鞘に収めるエストさん。
同時に、ギャンタンカーが爆発し、爆風に豪奢な金髪を煽られながら、彼女は炎を背景に髪をかきあげる。
……なんか凄く絵になっててカッコイイ。
やっば、ちょっとキュンってなった!
目が合うと、向こうも微笑んで両手を上げる……私も同じように両手を上げて駆け寄るとハイタッチ。
向こうも、うえーいとか言っててノリノリ……あれ? いつのまにかキャラ変わってない? この人。
リアンとルーシュが駆け寄ってきて、揃って抱きついてくる。
「ロゼさん! かっこよかったですぅ!」
「ボクら……勝ったね! やったぁっ!」
「二人も頑張ったよね……お疲れ!」
そう言って、私も二人を抱き返す。
実は、全員生存クリアって今回が初めて!
前衛が二人いたから、私が攻撃に専念できたのと、謎の変身スキルが発動したのも大きいけど。
ルーシェのアイスショットの精度が神がかってたのが勝因かな……あのシールド、ダニオが言ってたとおり、普通にやったら攻防一体ですごく攻めづらかった。
あと、リアンが余計なことせずに、回復に専念してた事もあるかも。
あの娘、無駄に勇猛果敢なとこあって、勝ちムードになるとわざわざ前線に突っ込んでくるんだよね。
……って、なんか大ボス戦かなんかのノリだけど……実は練習ステージのボス。
まだ55階もあるとか、ふざけんな。
……どうやら、このクソダンジョン……ダニオ解雇に伴って、難易度上がって、よりクソになってる模様。
先が思いやられるなぁ……。
あとついでながら……ボスキャラ報酬宝箱の中身は、ギャンダモハンマーだった。
ダニオいわく1/100の確率で手に入る激レアアイテムだそうだけど……何故か、私が装備できた。
あの……要らんのですが。