第三話「ギャンダモー大地に立ったり、立たなかったりする。」③
「あっぶな! リアンっ! ……今のでこっちもアイツにタゲられたよっ!
戦闘状態になっちゃったから、迷宮外転移も使えない! もうこうなったらやるしかない!
こんな通路の真ん中で戦闘とか、巡回モンスターに絡まれたら、エラい事になる……二人共、私が中に突っ込むから続いて!
そこのアンタも……お仲間も全滅しちゃったみたいだけど、こうなったら手伝ってよ!」
「……くっ……殺……ではなく、すまない……むしろ、恩に着る!
いいだろう……どうせ、私が最後の一人……力尽き倒れるまで君達とともに戦おう……まず、どうすればいい?」
「アイツは、回復持ちを最優先で狙ってくる……だから、あんたはリアンを身体張って守ってくれ。
私とルーシュがあいつに吶喊する! リアンはその騎士様を回復……私はフルアタックで行く!
と言うか……騎士様、色々面倒だから、まず名前教える!」
騎士様、HP結構減ってて、リアンが一生懸命ヒールしてるんだけど、なんか回復してる感じがしない。
「我が名は……エスト! エストリア・ランカスタだ!」
なんかこの娘って、セリフと表情があってないんだよね……。
フルフェイスの兜被ってれば違和感なかったんだろうけど、眠そうな感じの目とおっとりとした雰囲気……なんだけど、口を開くとむしろ漢らしい。
とは言え、名前が解れば、ステータスっと。
名前:エストリア・ランカスタ
年齢:12歳
クラス:聖堂騎士テンプル・ナイツ
レベル:20
最大 HP:218+200
最大 MP:60
攻撃力 :47+18
防御力 :76+70
魔力 :27
魔法防御:30+25
敏捷性 :33-15
運 :33
武器:ブロードソード+3 AT+18
防具:プレートメイル DF+30 MDF+5 AG-10 ナイツシールド DF+20 AG-5
聖樹の守り DF+20 MDF+20 HP+200
魔法:セルフヒール 3 プロテクト 6
スキル:近接戦闘 12
対魔結界 7
守りの構え 10
挑発 5
治癒魔法 3
聖樹の加護 10
備考:誇り高きトリストリア聖国の姫騎士。
口癖の「くっ殺せ」は様式美。
実は結構きょぬー。巨乳ロリとかよくね?
……この備考欄って誰が書いてるんだろっていつも思う。
いつの間にかパーティーにも加入されたようで、視界の片隅に彼女の名前のHPとMPのゲージが表示されている。
もうなし崩しでのお仲間入りだけど、パラメーター的に私と同じくらい……むしろ、結構強いような気がする。
特にHPとか倍以上……リアンの回復だと一回で20とか30くらいしか回復しないので、マックスまで戻そうとリアンがMPポーションを併用しつつヒールを連打してる。
元が弱いから仕方がないんだけど……めっちゃヘイト稼いでるし、MPポーション使い過ぎは後々ヤバいから、ほどほどにした方がいいよ……それ。
騎士エストさん、私よりも防御特化で、自己回復とかも持ってる……なんだかんだで最後まで生き残るタイプ?
と言うか……私、実はアタッカー寄りだった? ダニオの野郎、聞いてないぞ?
「うん、エストさんだね……私は紅あかの鬼族の戦士……鬼士ロゼだ!」
「わ、解りました……メイドさんだと思ってましたが……騎士様なのですね!
畏まりました! ……我が家名の誇りにかけてリアン様をお守りします!
それと……もしかして、リアン様って……リアン第二皇女殿下ではないですか?
もしかして、そちらの方はルーシュ第一皇女殿下?」
「え? わたし達の事知ってるんですか?」
「はい、我が聖国の隣国たるラピュカ王国の悲劇は存じております……。
リアン殿下も魔王ギャプロンに処刑されたと聞いて、痛ましく思っていましたが……。
ご無事で何よりです……覚えておりませんか?」
「ええっ! じゃあ、エストおねーちゃん?!」
「はい、そうです……実は貴女方のことを探していたんです! ここで出会えたのも僥倖!
かくなる上は、我が身命を賭してお守りいたします!」
……良く解らないけど、リアン達の知り合いっぽい。
そういう事もあるんだな……でも、そんな呑気に喋ってる場合じゃない。
ミサイルの集中攻撃を対魔術結界で防ぐ……ミサイル、何故か魔術扱いだった!
さっきのエストさんの仲間が物理保護シールドで止めようとして、止められなかったのを見てたから、もしかしたらって思ってたけどやっぱり!
けれど、その隙を狙って、純物理なギャンダマハンマーがリアンへと迫る。
やっぱり、リアン狙い……まぁ、そうなるよね……。
でも、エストがシールドを構えて、ハンマーを真正面から受け止めてくれる! ナイスフォローッ!
あの重い一撃を平然と受け止める辺り、この姫騎士さん強いっ!
「貴様の本気はこの程度か! 我を倒さずして、リアン殿下に触れられると思うなぁあああ!」
思わず、私も攻撃衝動にかられるくらいの強力なヘイトアップスキルを発動したらしい。
「挑発」って確か口上に合わせて自動発動されて、敵のヘイトがごっそり向かうんだよね。
と言うか……私も本来はあっち側なせいか、攻撃衝動にかられるとか危ない……なるほど、ヘイトってのは敵側だとこんななのか。
けど、なんでさっきの戦いで使ってなかったんだろ? もしかして、この人……自分のスキル構成とか解ってなかったのかも。
統率取れてないぐだぐだ戦闘だったのも、それぞれが好き勝手に戦ってたから……そういう事なのかも。
ステータス魔法とか当たり前に使ってたけど、もしかして冒険者サイドとかでは使われてない?
けれど、エストさんの挑発は、意外な相手も刺激したらしく……ギャンダマーの背後から、砲撃が放たれエストさんに直撃する!
「くっ殺せっ!」
爆風に飛ばされながら、そのセリフ……さっきから思ってたけど、使い方、間違ってるよね?
ギャンダマーの背後に鎮座するのは、ギャンダマーの足をキャタピラにして、両肩に砲を付けたような感じの奴。
両腕は、3つの短砲身砲を束ねたような感じ……ギャンダマーもダサいけど、こっちはソレに輪にかけてダサい。
さらに、頭の部分は、透明になっていて、何かが座ってるのが見える。
……ツッコミどころ多すぎるだろ!
「ふふ……ロゼたん、俺氏の解説が必要だよね?
説明しよう! アレはギャンタンカー! ギャンダモーと同時に開発された連邦機動騎士のプロトタイプ!
砲撃戦に特化した戦車のようなものだ……空は飛べないし、格闘戦能力もゼロだから、近づけば怖くない。
でも……本来、10層以降の雑魚キャラのはずなんだけどね……なんで、五層のギャンダモーと一緒にいるんだろ?
しかも、これパイロット付きだ! やっべぇお! お前ら詰んでんじゃね? これ。」
……ダニオのクソ情報……以上。
やかましいわ。
連邦ってどこの連邦だよ……!