どこから手を付けたもんでしょう?
「さて、わがラーハルト家の精鋭たちよ。領内の発展のため意見を聞きたい。良い考えを出した奴には、その仕事を全権委任しよう!」
「それなんて丸投げ?」
呆れたようにカイルがつぶやく。
「拙者にそのような大役、恐悦至極!」
「まずは兵を森に突っ込んで死ぬほど鍛えましょうぞ!」
もうヤダこの脳筋コンビ。
「エレス、まず大事なことは跡取りを作ることだと思うの」
ミリアムが相変わらずの色ボケ発言をかます。
「てめえら真面目にやる気あんのかあああああああああああ」
俺の絶叫は領主館を震わせた・・・気がした。
脳筋のサムライ二人にはハリセンによるツッコミが炸裂する。ミリアム、妙に潤んだ瞳でこちらを見るんじゃない、悪寒が走るだろうが!ええい、仕方ない。とりあえず思いつく順に指示を下していった。
「ロビン、資金を調達と訓練を兼ねて森で狩猟活動!」
「わかった」
「カイル、兵10人ほど連れてって領内の巡回。あと、問題がないかの聞き出しを頼む」
「サムライコンビ、30人ほど魔法使える兵を連れてって、村と北西の森の中間に拠点を作ってくれ」
「「承知!」」
「中央に拠点作ったらそこから左右に簡単な小屋を作って冒険者とかを支援できるように物資を集積。冒険者引退したやつとか兵士志願のやつを雇って、常駐させよう」
「エレス、中央の拠点で開墾させて自給自足できるようにしたら良いと思うの」
「良い案だミリィ。村長に相談して人を出してもらおう」
「妻として当然のこと」
だからそれはもういい。天丼は2回めはいらん!
「川の桟橋を増築しよう。村からの道も整備。桟橋周辺に宿泊できる建物と、物資を集積する倉庫を建てるんだ。ミリィ、村人から工事参加者を募ってくれないか?」
「わかった。・・・で?」
「何だミリィ、まだ何かあるのか?」
「エレスのこなす仕事は?」
「あ、そういえば、俺達には割り振ってるが、エレス殿自身は何をするか決まってないですな」
カイルがジト目で俺を見る。
「あー、えーと・・・だな・・次の方針を考えるために執務室で資料を確認する!」
「なるほど、では資料を用意させましょう。サムス!」
「お呼びでしょうか?」
カイルの呼びかけのあと初老の執事服をまとった男性が会議室に入ってきた。後ろに膨大な資料を持った使用人が控えている。
「エレス殿はこれより不眠不休で過去の資料を確認し、この領の問題点を洗い出してくださるようだ。補佐を頼む」
「承知いたしました。おお、お初にお目にかかります。この館の執事を務めますサムスと申します。今後共よろしくお願い致します。エレス様」
全力で目を泳がせながら威厳を保ったつもりで答礼する。昼寝を決め込もうとしたあてを外し、梯子を外され、ちょっと涙目で資料の山脈に手を付けるのだった。
こんなはずでは・・・どうしてこうなった?