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人口増加策と軍備増強

 今日も今日とて俺は執務室で書類に埋もれていた。サムスと今後の方針を話し合う。他の部下どもは外に出て公共事業まっしぐらだ。
「うーん、人口が頭打ちになってるな。むしろ下降気味か。このままじゃジリ貧だな」
「王都から率いてこられた兵たちですが、彼らの家族や親類縁者を呼び寄せてはいかがか」
「ふむ、それは良いとして、増えた人口を養う手立てはどうする?」
「森の狩猟と北部平原の開拓、それと河川交通と物流強化ついては先日手を打っていたかと」
「ああ、桟橋の増加と倉庫、宿場の増設な」
「そこの管理する人員はまだ決まっていないはずです。そこに兵たちの家族の雇用先としてはいかがでしょう」
「おし、やっといて」
「かしこまりました。アラン、この布告書を広場に貼りだすように」

 サムスの懐から出てきた書類を持って少年兵が駆け出していった。確かサムスの一番下の息子だったな。
しかしうちの兵たちは土木工事がひたすらうまくなっていくな。ていうか、懐から完成された布告書が出てくるあたり先読みとかいうレベルじゃないな。もうこいつに丸投げしときゃ良いんじゃないか?

「旦那様、執事たるもの主の意を先回りして準備を整えておくのが作法でございます」
「お、おう・・・これからも頼む」

 それからいくつかの方針を決めた。土木工事とはいえ魔法を使いまくるうちの兵たちは魔力や技術が非常に上がっている。北の砦(監視塔と簡易拠点を作れって指示が何故か砦になってた)周辺に農地が作られ、川から水路が引かれていた。兵士相手の商人も訪れ、集落となっていた。これはサムライ二人の故郷の制度を取り入れた結果らしい。屯田制とかなんとか。兵を常駐させる際に現地で少量生産を行うことで後方の補給負担を減らすのが目的である。
 冒険者や自由戦士が訪れ、トゥール北西の森へ入ってゆくときに、北の砦が便利な拠点となっていたのである。なんかギルドが出張所を出す許可を求めてきたので、2つ返事で回答した。ついでに募兵の看板を出す。腕に覚えのある彼らが加われば即戦力となる点もあるが何にしろ人手不足が一番の要因である。騎士への取立を提示したところそれなりの応募があるようだ。まずは訓練への参加を義務付け、集団戦を習得させる。魔法を得意とするものは魔法兵へと編成した。

 1ヶ月後、兵たちの家族が到着し、新たに作った市街へ住まわせた。適性と希望にあわせ、新規事業として始めた街路整備と開墾、宿場の管理などに割り振ってゆく。ギルドにも仕事が増えており、町中の軽作業を子供や老人にも割り振った。
 新規で雇用した兵が50名になり、元からの兵を含め、選抜戦を行うことにした。参加は自由で、自信のある者のみとした。16名の志願者のうち勝ち抜いた4名を騎士見習いとして昇格させた。その上で、実力のある者はどんどん取り立てることを約束し、兵士の士気向上と、新規募集の増加を図るのだった。

「カイル、模擬戦やってみないか?」
「ふ、良いでしょう」

 訓練用の木剣を手に向き合う。俺は両手持ちの剣を、カイルは片手剣と盾を手に向かい合った。どうもこいつらカイルの力量を把握してない。うちの手勢のNo.2であることをしっかり理解させんとな。
そう考えを巡らせながら、構えを取っていった。

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