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惣賀真心の期待

私には、一つ期待していることがある。ひょっとしたら、兼藤先輩ー健資先輩が私の事を選んでくれるのではないかと。なぜかそう思うのだ。これは・・・女の勘?

「鴻城。とりあえずお前の案は没な」
と俺が無情に告げると、鴻城は、
「なぜです。あまり答えにくそうな問題をと言ったでしょう」
と言う。俺は、
「だからってアニオタクイズにしろとは一言も言っちゃおらん」
と言い返す。そこに真心が、
「じゃあ私の案はどうですか?けん・・先輩」
と言った。俺は、
「うーん。ま・・真心の案は・・・とりあえず保留で」
と言い淀む。なんというか。これは・・・・。と、鴻城が用紙をのぞき込んでくる。鴻城が、
「恋愛系のクイズばっかですね。女性しか答えられないような」
と言う。なんではっきり言っちゃうかなあ。ほら、真心の表情が・・・・ちょっと怖い。真心が、
「あはは。そうですよね。私の案は一時取り下げで・・・・・お願いします」
と言う。その眼は、なんか微妙に悲しそうである。俺は、
「・・・・・・・とりあえず今日は解散ってことで。また明日・
と言った。そのほうがいい。この微妙な空気では落ち着いてミーティングができない。すると、
「あの・・・この後カラオケでも行きませんか」
と言う。俺と鴻城は、
「えっ!?」
「正気ですか?」
と同時に言う。真心は軽く微笑み、
「大丈夫です」
と言う。いや、そんな顔でそんなこと言われても・・・・。

結局来てしまった。俺は既に2曲ほど歌ってしまっている。真心は・・・テンションがいつもより高い。真心は、
「先輩。私も歌います!先輩と一緒に」
と言う。俺は、
「は!?いや、デュエット・・・何歌うわけ?」
と言った。一度こいつと歌ってみたい。なんて思うのは、やっぱりこいつが好きだからか。真心は、いつの間にかっ手に曲を入れている。真心は、
「これ歌えます?」
とタブレットを差し出す。その曲は、幸いにも知っている曲だった。結構昔の曲だが。

全て歌い終わると、俺は真心に、
「お前よくあんな昔の曲知ってたな」
と言った。真心はいつものフワッとした笑顔で、
「ああ。だってお父さんがよく歌ってるんだもん」
と言った。ああ。そういう事・・・・は?
「お前のお父さん。昭和何年生まれ?」
と聞く。真心は、
「えーと。1972年生まれだから、昭和47年かな」
と言う。俺は、
「あの曲出たの、1961年なんだけど・・・なんでお前の親父さんが知ってんの」
と言う。真心は何故か不満そうに、
「お前じゃなくて真心って呼ぶんじゃなかったの?」
と言う。ああそっか。俺は、
「なあ。今度の日曜。うちに来てくれ」
と言う。真心は怪訝そうに、
「・・・・・え?えええええ!?」
と言う。鴻城が不思議そうに、
「どうした?」
と言う。俺と真心はほぼ同時に、
「何でもない!」
「何でもないです!」
と言った。鴻城はそれでもけげんな表情を崩さないが、もう何も聞いてこない。

ああああああああああ。なんか緊張する。日曜。先輩の家・・・。
「お姉ちゃん。何してるの?」
と唐突に妹・真戀の声がする。私は、
「ふえ?」
と変な声が出てしまう。真戀は、
「なんでクッション抱えてゴロゴロ転がってる訳?」
と言う。へ?私そんなことしてた?恥ずかしい。私は、
「・・・別に何も・・・」
と言う。この子しつこいからなあ。説明に時間がかかるんだよなあ。まだまだ寝られそうもないな。日曜を楽しみにしながら、私はそんなことを考えた。

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