12
「最初にここに来てたのは私の姉の咲良。咲良が来られないから私が代わりに来たの。」
「お姉さん?」
「春小町に逢いたい?」
「逢いたい!!」
思わず力を込めて咳を連発してしまった。
「咲良も同じように咳してた。」
クスクスと笑われてちょっと恥ずかしくなった。
原田について行くとそこは小物屋さん。
店内からコンコンと咳き込む音が聞こえてきた。
カランカラン
店のドアに付いた鈴が軽やかに鳴る。
この前気づかなかったことだ。
「咲良姉ちゃん、春小町の男の子だよ。」
「え?」
店の奥から顔を出したのはこの前リボンを買った時の綺麗な人。
この前は結んでなかった栗色の髪を今は一つに結んでいる。
「もう、也実、本当のことは内緒にしといてって言ったのに……ごめんね、君から見たらおばさんだよね。」
俯き、赤面する咲良さんはとても可愛くて僕まで真っ赤になった。