8
桜の木の下に到着して深呼吸する。
急いで来たから息が上がっていた。
何気なく、昨日リボンを結んだ場所を見る。
何故か違う色のリボンが風にはためいていた。
緑色のリボンを外してみるとカサッと草の上に何かが落ちる。
細く折られた紙のようだった。
見てもいいのかなと思いつつ紙を開いてみると、『ありがとう。春小町』と書かれてあった。
僕はドキリとした。
春小町さんがやって来たのだと思うと気持ちが一気に盛り上がった。
僕は鞄からノートを出して破ろうとして、手に持っていたリボンを置いた。
「ヤバッ!」
リボンに赤黒い染み。
先程、木に結ばれていた時にはなかったから……
手のひらを見てみると左手の人差し指に小さな傷ができていて、血が少し滲んでいた。
「どうしよう……」
僕は鞄を置いたまま丘を駆け下りた。
走りながら財布を開いてみる。
千円札が一枚と五百円が一枚あるのだけ確認して、学校の近くの小物屋さんに直行した。