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確かにそうだ。病院に凶器を持って侵入するのはあまりにも難しいし、それが連続殺人犯のいる精神病院であればなおさら難易度は跳ねあがる。
僕が自力で復讐することを諦めたのは、射撃場に通っても上達する気配のない銃の腕が原因でもあるが、そもそもとして命を狙うこと自体が難しい状況にあることが大きい。
さすがに、無理か。あるいは、金でも積めば解決するだろうか。
悪い方向へ転がり始める思考を遮るように、ヴァージルは口を開いた。
「可能ではあります。──あなたに苦しんでもらうことになってしまいますが」
マグカップを持ち上げようとした手が、途中で止まった。口をつけることなくテーブルに戻るカップに一瞥することなく、ヴァージルは一言断ってからジャケットを広げた。
ジャケットとインナーの間には、やはりというべきか、ホルスターが挟まっていた。わきの下に収まっている拳銃を──撃つつもりなどない、と主張したいのか──つまむようにして持ち上げ、テーブルの中央に置く。
細やかな装飾が美しい、古風な回転式拳銃だった。そもそも色からして通常の鉛色からかけ離れた黄金だ。グリップは落ち着いた色調のベージュ。瀟洒で華奢なアンティークは、人を殺すという役割に特化しているとは思えない。博物館か美術館の展示品がお似合いだ。
怪訝そうな顔になったであろう僕の感情を読みとったのか、ヴァージルはまたひとつ、不可解な言葉を口にした。
「魔法銃、というものをご存知でしょうか」
復讐代行の次は魔法銃ときた。