第2話
秋嵐は、入って来るなり喚き散らす、神子らしい彼、空に呆れかえっていた。しかも、本来なら秋嵐の側近であるはずの彼は、神子のご機嫌とりを行っている。
まったく、どうかしている。黎深につまみ出してもらおうか。
黎深を呼ぼうとしたとき、神子がとんでもないことを口にした。
「春樹は、何処にいるんだ。あいつは僕のものなんだぞ。でも大丈夫だぞ、今は秋嵐が1番好きだからな」
嬉しくない……春樹……誰の事だ。
「そなた以外にも、此方に来た者がいるのか」
「居るぞ。春樹って名前の僕のパパの双子の弟だぞ」
「そうか」
なら、そちらが神子の可能性があるな。
空の言葉に黄巾が、とんでもない命令を出したのだ。
「空様にずっと付きまとっていた方が、館内にいるようです。探し出せ」
「黄巾、何を言っている。黎深、急ぎ、ハルキとやらを探すのだ」
「御意に」
視線を戻すと、黄巾と空の姿はなかった。
早く、春樹という名の青年を探さねば。殺される前に。
秋嵐も狼の姿になり、自室から飛び出した。