第1話
神子が現れるという神殿。現れた空。その場にいた者、全員が歓喜した。彼の珍しいクリーム色の髪と可愛らしい容姿に目を奪われ、一目で恋に落ちた。
その光景を無言見ていた騎士は音も立てずに神殿から出ると、自分が仕える主の元に向かった。
マリュウシャというこの地にしか、咲かない花が描かれた襖の前で彼は膝をついた。
「主上、ご報告が」
「入れ」
中では、獣国 華月の王 秋嵐(しゅうらん)が丸い大きな回転式の机で、書類仕事をしていた。
秋嵐の部屋は、丸い窓に龍の調度品が置かている。真ん中に回転式の丸いテーブル。隣の寝室は、畳で、横長の赤い色のタンスが壁際に置かれ、その上には、マリュウシャの花瓶が置かれた、余り物のない部屋である。
「何があった、黎深。いつもなら黄巾(こうきん)が報告にくるはずだが」
秋嵐の問いに、現騎士団長の黎深(れいしん)は、ありのままを報告する。
「黄巾様は、神子様に絆され、神子様の世話を甲斐甲斐しく焼き、他の兵士たちを牽制しておいでです」
気に入った者には、とことん入れ込む癖があるのは知っていたが、まさか、ここまでとは。
「黄巾は仕事が出来るから、側に置いていたが、対策を考え無ければならないかもしれぬな」
秋嵐が頭を抱えた時、襖の向こうから声が聞こえた。
「主上、神子様をお連れしました」
秋嵐は、黎深に目配せし、隣の部屋に待機させた。
居住まいを正しい、秋嵐は、黄巾と神子(仮)を招き入れた。