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俺の名前は敷島 典正だ。
今のスキルは某公立高校に通う『ごくふつうの高校生』である。
……まだ、いまは。

まだ、と言ったのは俺が転生を待つ身であるから。
だって俺の名前をよく見てくれよ、『典正』だよ、読みようによっては『てんせい』って読めちゃうじゃん?

これこそが我が宿命と信じて俺は生きてきた。
しかし、いまだに異界からの迎えは来ない。

そうしてこの現世で17年という長い時間を過ごした俺は、いついかなるときの召喚にもあわてぬよう、極力地味な人生を送ってきたのだ。
だって、いきなり人ひとりがこの世から消えたら、必ずや遺されたものは悲しむだろう?
ましてや人気者などであればなおさらだ。

だから、今現在の『ふつうの高校生』というスキルは自ら望んで選んだもの、断じて俺本来の姿ではないはず……なのだ。

さて、ここで今現在の俺の姿を少しだけご紹介しよう。
高校での成績は中の中、ルックスも中の中、身体能力も中の中。クラスでは人目につかぬよう、特に教室の隅に好んで居るようにしている。
特に話しかけてくる友人も居なくて、日がな一日暇さえあれば読書にふけっているのだ。
所属する部活は映画研究同好会という弱小部で、先輩が卒業した今、残る部員は俺一人という帰宅部並に気楽な部活である。

特筆すべきことといえば両親共に仕事で海外に出かけており、高校生にして一軒家での一人暮らしというラノベ主人公必須の条件を手にしていることだろうか。
どうやら俺はやはり異世界へと召喚される運命らしい。

そうだ、ラノベスキルといえば、俺にはちっとも似ていない可愛らしい妹がひとり。
もちろん、兄弟間で恋愛感情云々といった安っぽい話などない。
何しろ俺の人生は二束三文で売られるようなラブストーリーではなく、壮大にして過酷、かつ冒険に満ちた異世界転生ファンタジーであるべきなのだ。

ところがこの妹、そこを理解していないらしく俺にべったりである。
朝も必ず部屋まで起こしに来るという、まさに王道妹系ラブコメ展開……

……妹?

…………俺に?


俺に妹なんかいたっけ?

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