適当なやつ
俺は適当だ。
基本的に人との会話はお決まりのセリフをイントネーションだけ変えて成り立たせている。
「マジで?」
「マジっすか?」
「マジかぁ〜」
正直に言ってあまり頭は良くない。
ノリと勢いと雰囲気だけでここまでやってきた人間だ。
そんな俺がここまで職務を全うできたのは、間違いなく周りの奴らのおかげ。
「いけるいける!」
「やっちゃおう!」
「大丈夫、まだやれる!」
適当なことを言いながら、仲間たちを盛り上げて、この世を渡ってきたのだ。
そんなこんなで気付けば今の地位を築いたわけだが、俺のスタイルは変わらない。
適当で、軽薄で、曖昧な返事。これこそが俺をここまで押し上げてくれだのから。
今日も何人もの仲間たちが俺に話しかけてくる。
「マジで?」
俺はその場の勢いで答える。誰に何を言っているかなんて実のところ良く分かっていない。
でも、こんな俺でも野望はある。
やはり男として生まれてきたからには後世に名を残したい。
どんなことをしてやろうか?
それはまだ考えているところだ。でも可能性は色々なところに転がっているはず。
例えば今のこの状況だって、都合よく解釈されたら「10人の会話を聞き分けていた」なんてことになるかもな。