006『お父さんは心配症』
「ツギクル……アナリティクスにアクセス。
……接続完了。
アクティブユーザーを確認。」
「『S:I:R:E:N』起動チェック開始……。」
「……キルリアン濃度劇的に上昇。
簡易TMSを開始……前頭葉機能の強化を確認。
ニューロンチェッキングプログラム、スタート。
リンク、アクティベート。
バイタルと精神ダイレクトコネクションに僅かな乱れあり。
システムへの影響は軽微。
『S:I:R:E:N』起動します。」
「……おかえりなさい、Puzzler。
私は謎解きアプリ『S:I:R:E:N』の
支援ユニット……神楽:03です。」
「今回も、すべてのPuzzlerに
御膳上等の謎をお届け致します……。」
「……ニューロンチェッキングプログラム。
複数のPuzzlerから深い喜びの感情を検出。
謎解きバトルモードに移行します……。」
「……それでは、出題します。」
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Title:『お父さんは心配症』
今日は娘の授業参観だ。
俺は他の保護者に混ざって教室の後ろに立ち、
緊張した面持ちの娘に目配せを送った。
大丈夫、いつも通りやればいいんだ。
そんな気持ちを込めて頷きかけるが、
娘は首を僅かに左右に振って目をそらした。
まったく、ガチガチじゃないか……。
それに、保護者ばっかり気にして何をやってんだ。
今は授業中だろ? 後ろを見ていないで、
ちゃんと授業に集中せんか……。
ほらほら、父さんのことは気にするな!
家にいる時とは別人のように
ボソボソと話す娘に厳しい眼差しを向ける。
瞬間――教室を揺るがすほどの大声が轟いた。
「無関係の方は出て行って頂けませんか?」
おっと、今日はここまでのようだな。
でも、ようやくらしくなってきたじゃねぇか。
よし、明日も様子を見に来てやるか。
みんな! 先生の授業をちゃーんと受けるんだぞ!
子供達に笑いかけて、教室の扉をガラリと開く。
すると、いかめしい表情をした教師や用務員が俺を取り囲んだ。
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「……謎解きバトルモード終了。
謎解き、お疲れ様でした。」
「ツギクル……アナリティクス……。
ニューロンチェッキングプログラム……。
ディスコネクト……。
『S:I:R:E:N』フェーズ7に移行します……。」