伴奏曲8
稗や粟を育てているに近い。元々は田んぼに生える雑草であったがその栄養価が見直され雑穀米とすらなった高価なものだ。他にも麦やとうもころしなどがあるがこの島には垣根がない。
つまり気づいたものが手伝う。
ただ賃貸がないので家族や貴族から提供された住まいに住んでいることもある。大きな洋館がホテルともいえた。
空いている土地に住んでいいのかは神父に尋ねるといい。
だからこの島には不動産がない。もしそこに住んでいるものが他界したら家族が基本住むことになっているが住みたいものが話し合いとなることもあった。
仲介人は神父だ。
この島を出ていくものと、この島に永住に来るものがちょうど半々ぐらいになっている。最果ての地と呼ばれるだけあって余生を過ごすものが多い。
そうなると墓地なのだが、ここは散骨が基本となっている。墓地が先ずない。あるとしたら、あずさがこの島に来る前の土葬のままの墓地しかない。たまたま穴を掘っていたら人骨がでてきた。
それがこの島の繰り返しだ。
病院は一応ある。
予防接種もしっかりとこの島にはある。税金がない代わりにすべてが自腹だ。
貧困に困るものがいたら誰かが手を差し伸べる。それでも駄目なら神父がいる。
急患であった場合はヘリポートがないため、向こう岸の島まで搬送される。この島に比べたら治安が悪いが考えは、あずさの指針そのままにある。
死してもなおその考えにそうのが安藤には少し不思議でしかたがない。
。
ジェスチャー混じりの安藤は片言でしか日本語が通じないときは、どたばたとした鶏のようだ。手振り身振りであずさのことを聞こうとする。
しかし仕事の邪魔をしようものならその場から安藤は追い出されてしまうことがほとんどだ。
この島民の気質は日本人に近い。
その気質とあずさの考えが重ねあっただけなのだろうか。
――――過ぎし日々を綴る。この島に再び悲劇が起こらないように。
安藤はまだ完全に体力が戻ったわけではない。