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伴奏曲7

 SP以上の警護を連れ、この島に来る。生前贈与など弁護士とこの島に永住する前に入念に話し合った。それでもやはり日本を離れる。それはどこか物悲しさ以上に息子をそのようにしか育てられなかった。
 泣き崩れそうな妻の背中を夫は優しくさする。
「もういいんだよ、あずさが待っている。行こう」
 一歩、一歩とこの島に近づくに連れて奇跡が起こる。
 すべてが輪廻を繰り返す。ここには魂の奇跡がある。
 少しずつ年老いた肉体であってもこころは童心に返っていっていた。この島に到着した頃には出会った頃の老夫婦であった。
 交し合う心の重なりが協奏曲となる。
 教えでも悟りでもない。
 この島には確かに魂のルフランが存在していた。

 安藤ははち切れんばかりに膨れあがった腹を叩いた。
 粗末に慣れきってしまった安藤は久々に食べた飯に軽い吐き気をもよおす。しかし元々雑食性の安藤は大きな欠伸とともにぐっすりと眠ってしまうと平然といた。
 自家発電を基本としたこの島は電気があってないようなものだ。
 近代文明にしてしまうことを島民達はなによりも恐れている。
 この島はまさに十万億土。
 もし裁きを下すのが神だとしたら、その裁きがこの島にはある。
 邪心に満ちた者達を次から次へと神は戒め続けていた。
 この島だけが武装をしていない。この島に侵攻しようとすると日本でいうなら神風といったところか。なんらかの裁きが必ずあった。その裁きを与えるのは海原なのだろうか。神話になっているといっても観光名所独自のなにかがあるわけではない。
 あるのは神話になっている「あずさ」のすべてにある。
 安藤はぐっすりと眠ると郷に入れば郷に従えの教えにそう。
 この島は日本でいうなら働かず者食うべからずにあった。
 それ以上に島民と仲良くなることでさらに、あずさの逸話を聞きだせるかも知れない。
 数日は静養していた安藤であったが老夫婦が組紐のようなヘンプパラコードランヤードとこれがまた舌を噛みそうなものを作っていた。他にも自家菜園をやっているが痩せた土地で作れるのは数知れている。

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